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わすれてた。

そう言えば、言った方も考えていた方もすっかり忘れていた事がありました。

「白黒でポジを作ってくれって言われたらどうしよう?」

みたいな問題をずいぶん前に出していました。マジですっかりポンと忘れてしまっておりました。
でも、白黒でポジなんて、デジタル全盛のご時世に、不要なこと山の如しの話なんですけどね。

でも、
もう一度話を反芻してみよう。
素晴らしい風景が目の前にあるとして、それを最終的にカラーポジ
フィルム(カラースライドだな)にするのはそれ程難しい事ではないだろう。初めっからカラーのポジフィルムで撮影すれば良いことだし、ネガで撮影したとしてもフィルム転写でポジ化する事ができる。じゃあ、カラーポジじゃなくて白黒ポジは?っていう問題です。
ちょっとプライドが高い系で、写真の事は大概知ってるんだぜ系の方には、メンツを擽られる話題なんですけどね。(笑)

まぁ、そう言うのは置いといて。

安直な話で、Try-Xなどの白黒フィルムで風景を撮影して、そのフィルムをもう一度白黒フィルムで撮影すれば良い訳ですかね?
でもそれをやると白黒フィルムの紫色というか薄藤色というか、フィルムベースの色が乗っちゃうので、そう言う色のポジになりますよね。それって白黒じゃないよね?

だったら・・・

白黒反転フィルムにコンタクトプリントをすれば良いのさ。
これはかなり良い感じの答えなんだけど、残念ながら白黒反転フィルムは色素を白と黒しか持っていない、つまり白黒二値のフィルムなのよ。だから白黒の中間色が全て飛んでしまうか、粗く黒つぶれになっちゃうんだよねーー。

って言う話で確か終わっていたような気がする。
純粋に知りたい系の方は「そろそろ教えてくれないかぁ・・・」って感じだと思いますけど、高プライド自称ベテラン系の方は、額に血管を浮かべて「早く答え書かんかぃ!!」って、思いつつも黙っている段階にまで来ていると思いますので、ここらで答えを記したいと思います。
答えを知っていても、実際にはそう簡単にできるって物でも無いので・・・。笑

白黒のポジを完成させるには、ファイングレイン・ポジティブフィルムというフィルムを使います。もっと簡単に言うと白黒のシネフィルムの一種という事になります。
このフィルムは今は売っていないけど、同じような物が今も出回っているようです。丸い缶に巻きで入って売っています。
35mmでフィルムベースは透明で白と言うかクリーム色というか薄黄色というか、そんな色の乳剤が感光剤として塗られています。
元々シネフィルム(動画)として売られている物なので、医療研究の記録用とかに使われていたようです。
ちょっと自慢話になるかも知れませんが、このフィルムをパトローネに巻き取って、カメラに装填してマクロでネガを透過撮影し、白黒ポジに仕上げたのは、もしかしたら私が日本で初めてじゃないだろうか?
と言うと、高プライド系の方が堰を切ったように口を開いて、

「それなら俺もやっていたよ!」

と、言い出しそうなので・・・って言うか、なんかめんどくせぇな・・・。高プライド系・・・。じゃあ撮影条件位は憶えてんだろ?言ってみてよ。っていう所は残しておこう。笑

実際に、この仕事は「あちこちで出来ないと断られた」というお客さんから持ち込まれた物だった。よりによってそれを私の師匠が「どうにかする」と言って受けちゃったもんだから大変だった。
師匠はファイングレインフィルムを、コンタクトプリントすれば簡単にできると踏んでいたようだが、事はそんな単純な物ではなかった。べた焼きで出来上がるなら、あちこちで断られたりはしないだろう。その後、この仕事は弟子の私に丸投げされてきたのである。

そんなアホな・・・っちゅう話です。(^^;

コンタクトプリントだと細かいホコリが問題になったり、やはり細部のディテールが潰れてしまうのだ。これがべた焼きの最大の弱点。これはスライドとしてプロジェクターで大伸ばしすると顕著に分かる。べた焼きは白黒二値の文字でさえも欠けたりするのだ。

それから色々やりました。
何をやったかも憶えていないほど・・・。
そしてファイングレインポジティブフィルムをローダーに装填し、35mmパトローネに巻き上げてカメラに装填し、撮影する事で反転するという方法に行き着いたのでありました。ファイングレインポジティブフィルムは、皆さんが思っている以上に低感度なので、粒子も非常に細かいので「撮影する」という方法を用いる事で、ホコリを解決し、その性能を100%発揮することができるのだ。しかも現像はセーフライト下でできるし、現像液も使える物が非常に幅広い。ここら辺は今も憶えているが企業秘密です。笑
実際に白黒ポジが出来上がった時、感動で海に向かって叫びたいくらいでした。これはさすがに師匠にも誉められました。っていうか丸投げするなよ・・・(# ゚Д゚)
この方法を確立したことで、当時はニーズの高かった高コントラストの白黒中間色写真の焼付けも3号印画紙で可能になり、ファイングレインポジティブフィルムの存在価値が一気に上がると同時に、とある医療機関がうちへ仕事を出してくれるようにもなった。あの手この手でこの方法を探ってくる同業者もいたけどねーー。
しかし、撮影その物は非常に難しく、当時の設備があったからこそ可能であったとも思う。今はフィルムがあっても撮影機材や設備がないので使えない・・・。

色々と書きましたが、そう言うことです。
白黒のポジって、見ると本当に味わいがあるんですよーー。
と、今さら少し宣伝してみたりして。笑