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難物と言われる山椒の木を育ててみています。その2

山椒の木の栽培の前回までのまとめ。
 
1)室内での栽培はLEDの補助光を使ってもほぼ不可能。室内栽培約2週間でほぼ枯死が確定する。
2)葉色が濃い緑色の株は弱光下、黄緑色の株は強光下で育てられた株なので、それを目安に栽培する場所を決める。違うと葉を落としたり成長が止まったりして株が弱る。
3)大きな株ほど、環境変化に弱い。
 
と言う感じです。
わずか半年で2本の山椒を枯らしてしまったが、2)が分かったのは収穫だった。実際に弱光下と強光下の葉色の差がどれくらいあるかと言うと、かなり差があるので写真で比べて見て欲しい。
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左が最近購入したブドウ山椒の株で、購入時も園芸店の軒下の日陰に置かれていた。右は昨年から我が家の南側の玄関口に置いている朝倉山椒の株で、真夏の炎天下はまだ経験がないが、秋~春にかけて1日4~5時間は確実に日が当たっている。光の加減もあるかも知れないが、それを考慮しても葉色にかなり差がある事に気付くと思う。ブドウ山椒の方は、当初日光下に置いていたが、写真のように葉がちじれて、枝先も水切れをしたようにナヨっとしおれた感じになるのを毎日繰り返していた。枯れたブドウ山椒がそんな感じだったので、今は奥の明るい日陰に置き、さらに朝倉山椒の枝葉で陰になるように対処している。右のこの朝倉山椒は前回朝倉山椒Bとして紹介した物だ。強光下の環境に順応し、今は50cm程に育って大きな葉を何枚も付けている。
勢いを感じたので春先に植え替えを敢行した訳だが、山椒は移植を特に嫌う植物だという話は、園芸ファンにも有名な話だ。つまり山椒は根を触られるのを極端に嫌う特性があるようだ。その他にも土が変わるのも嫌う傾向が強いようで、その原因は根張りが浅く、吸水が苦手である事も影響しているようである。だから植え替えをした途端に生育が止まって最悪は枯れ始めてしまうという事が起こるわけだ。
そんな山椒の植え替えの適期は生育が止まっている真冬の棒状態の時だとされる。休眠状態なのでその間に土環境を変えてしまえば環境変化の負荷が最小になって、結果成功確率が上がるという理屈だ。もちろんこれをそのまま実行すれば良いのかも知れないが、それでは実験にならないので、ある程度の仮説を立てて植え替えてみる事にした。その為に、以下の山椒を用意した。
 
1)葉山椒を昨年秋に購入した。晩秋に葉を落としたが春先に新芽が膨らみつつあるのを確認し、枯死していない事を確認した株。
2)北側1日2時間程度日が差すブドウ山椒Aと、先ほどの南向きの日陰に置いたブドウ山椒B。
3)地植えにした葉山椒の小株2本(AとB)。
4)北側の夕刻になると強光が差す朝倉山椒。
5)南向きの強光下に置いた小株の葉山椒C
 
仮説と言うのは私の私見ではあるが、山椒の植え替えに失敗するのは、土の変化ではないかと実は思っていて、植え替え前の土質と植え替え用土の土質との差が、余りない場合は持ちこたえるし、差があると枯死してしまうという訳だ。
しかし、
各生産者の元で、それぞれのノウハウに応じて育てられてきた山椒の土質と同じ用土を配合するなど到底不可能なので、ここはクセのない配合の用土で育成してみる事にした。山椒を育てる平均的な用土の配合比は、腐葉土5、赤玉土(小粒)4、パーライト1である。パーライトは不要かも知れないが、入れた方が確実に排水性は上がるので、ここはおまじない気分で配合しておいた。山椒用の植木鉢の王道も通気性が程よい駄温鉢とされているようだが、一から買い揃えるのは大変なので、プラスチック製の鉢も用いた。
この用土に、購入時のポットよりも2回りほど大きなサイズの鉢に3月下旬辺りで植え替えた所、結果は以下のようになった。

1)の葉山椒であるが、株全体のあちこちから新芽が吹き出つつあったが駄温鉢に植え替えた所で成長が停止し、中途半端な新芽の状態となっている。場所はほぼ変えていないので、やはり土質の変化に敏感に反応しているようである。5月中旬現在も新芽は青いままで中途半端に停止している。昨年購入し冬越しをしてきた株なので踏ん張って欲しい所だが…。
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2)ブドウ山椒Aは、プラスチック製の深鉢に植え替えたが、現在の所は問題は出ていない。弱光下で育った葉色なので北側の場所は良かったのかも知れない。ブドウ山椒Bも弱光下飼育の株のようだったので、南向きではあるが日陰になる場所に置いている。こちらも問題は特に出ていない。

3)地植えにした葉山椒は、完全に日陰になる葉山椒Aは生育が悪く、生育の勢いが上がってこない。少し日の当たる葉山椒Bはゆっくりではあるが成長している。
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4)北側の朝倉山椒は、現在一番好調に育っている株と思う。10cm弱の小さい株ではあったが今は30cm以上に育っている。が、そろそろ夕刻の西日がきつ過ぎるのか、葉が枯れてきている部分があるのが気になる所だ。
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5)南向きの葉山椒Cは小さな株ではあったが6号の駄温鉢に植えている。これもゆっくりではあるが問題なく生育している。
 
これらを踏まえて考察すると、小さく若い株ほど環境変化の順応性が高く、土質や環境が変わる植え替えにも比較的強いという印象だ。つまり、山椒の苗木は品種に関わらず大きめの株を購入するよりも、若い株を購入した方が、植え替えの失敗が少ないという事だ。実際に、葉山椒ではあるが、小さな株で購入し鉢植えに1株、地植えに1株植え付けたが、どの株も枯れる事無く生育しているし、順応も早く新芽が出るまでが早かった。一方の40cm位の接木の葉山椒は、植え替えた途端に生育が止まり、どうなるか分からない全く逆の状況となっている。
という訳で、今回の教訓としては、

1)購入する山椒の苗は、できるだけ若い株を購入する。
2)若い株は、真冬の棒状態でなくても植え替えにほぼ順応してくれる。また地植えの場合は元肥が施された土でも順応する。
3)鉢植えの植え替え用土には腐葉土5、赤玉小粒5、または赤玉4にしてパーライト1を混ぜ元肥は行わない方が良い。
4)30cm以上の中株を購入した場合は、真冬になるまで購入した状態で育てる。真冬の棒状態になってから大きめの鉢又は地面に植え付ける。施肥はしない。これで春先に萌芽が無い場合は、6月初旬位まで様子を見る。それでも新芽がない場合は枯死している可能性が高い(幹の上の方を切断して中が乾燥していれば枯死しています)。
5)共通して言える事だが、購入時に付いている土は絶対に崩さない事。そのままポットから抜いてそのまま鉢または地面に植え付ける事。土を落とした瞬間に、その株はほぼ枯れる。また根を洗ったり肩の土を落としてもいけない。
6)一度置き場所を決めたら動かさない事。一方からしか光が入らないからと言って鉢を回したりするのもダメです。

という感じですね。
残るは水やりと剪定と言う日頃の管理ですが、これについてはまだ私は四季を通して山椒を育成していないので何とも言えませんが、水やりに関しては山椒の野生下での生育環境を再現するような水やりをすればよいと思います。野生の山椒の木は、日照時間が1日数時間とそれほど長くない所で、ジメジメした所に自生しています。という事は、割とジメジメさせておけば良いという事になりますが、鉢植えという限定された土環境の場合はそう単純にはいきません。いつもジメジメさせていると白絹病という治療不能の病気に罹ったり、根腐れして枯死してしまうからです。鉢植えの水やりは表土が乾いたらたっぷりやると言うのが基本です。しかし実はこの表現にも落とし穴があります。表土が乾いても中の方はたっぷり水を含んでいるからです。そこへまた水をじゃぶじゃぶやると水のやり過ぎになって根腐れしてしまいます。かと言って葉が萎れてしまう程控えると、水をやれば戻りますが、それを何度か繰り返していると株が弱ってしまいます。このタイミングが難しく「水やり3年」とも言われる所以でもありますね。私の場合は、表土が乾いていたら鉢を持ち上げて重さで判断します。ある程度まだ水があるなと思ったらやらなかったり「霧」モードにして葉水だけで終わらせたりします。たくさん葉を持っている株は、蒸散が盛んなので水がすぐ切れますので毎日水の含み具合を触ったり持ち上げたりしてから水やりを判断します。日陰にある鉢は、基本的に2~3日に1回です。朝一番にやるのが良いとよく言われますが、私は専ら夜にやります。なぜなら朝にやると特に強光下の鉢は、中のたっぷりの水がお湯になってしまうからです。試しに日が当たっている時の鉢を触ってみてください。めっちゃ熱いですから…。

という訳で行きがかり上、たくさん購入してしまった山椒の木ですが、できるだけ長く、そして立派に育ったら良いなぁと思っています。まだまだ分からない事が起こりそうですが、それらも記録して、また日記に記したいと思います。