新型コロナの影響で、撮影行どころではありませんので、自宅と職場で植物栽培などを実体験を踏まえるべく挑戦してみております。
植物栽培は元々嫌いな方ではなく、実は観葉植物なら二十代の頃から色々と育てておりますが、最近は料理に使える事からハーブをちょこまかと栽培しては乾燥させたりして、実際にオーガニックで育てたハーブを料理に使ったり、オリジナルのハーブソルトを作ったりしております。料理にハーブの要素を加えるだけで、味に深みが出たり、見た目がリッチになったりしますし、何よりもハーブを料理に振りかける自分に、ちょっと酔ってしまいますね(笑)。
で、そのハーブもバジルやローズマリーなど外来の物が多いのですが、日本にも世界に誇れるハーブがございます。それが「山椒(さんしょう)」でございます。
「山椒は小粒でピリリと辛い」などと申しますが、山椒の辛さと言うのはワサビや辛子とは違っていて、舌先が痺れるような感覚になるのが特徴ですね。中国ではこの山椒の辛さの事を「麻(マー)」の辛さと言います。中国には日本の山椒よりも「麻」の辛さが強い品種があり、赤い実を付けた姿から「花椒(ホワジョウ)」と呼ばれ、乾燥させた実の皮が調味料としてよく使われていまして、その代表選手が「麻婆豆腐」ですね。麻婆豆腐の麻はこの「麻」から来ています。余談ですが、唐辛子の辛さは「辣(ラー)」と呼ばれ、これは辣油(ラー油)に代表されます。この二つをラーメンに入れた物が「麻辣担々麺」として親しまれていますね。
閑話休題。
この日本の山椒は、中国花椒程の痺れはなく、ほんのりさわやかな山椒の香りと風味を嗜む形で利用されますが、どうもこの独特の香りと痺れが苦手で好き嫌いが分かれるようです。私も子供の頃は苦手でした。が、いつの間にか痺れの方が病み付きになり、今では鳥の照り焼きや丼物にも山椒を振りかけるようになりました。
山椒の木は基本的に捨てる所がないと言われます。
葉は生ならパチンと叩いてツマに添えたり、乾燥させて粉末にしたものを香りづけに使いますし、実は佃煮にしたり、乾燥させて皮を粉にした物はうなぎ屋さんで見ますし七味にも入っています。木の皮も粉にして利用する地域もあるようですし、花も花山椒と言って使われます。大きい木になった山椒は切り出して擂粉木にされますね。山椒ってホント優秀な木ですね。
今回は、自分への備忘録も兼ねて、山椒の木の栽培について自分なりにちょっと分かった事を書き留めておこうと思います。
山椒の木の栽培は、難易度で言うと超Aランクと言われています。つまり、長期栽培が非常に難しいと言われております。その難易度を少しでも下げる手段は、気候や条件の整った土地に地植えをするという事になるのですが、多くの場合はやはり鉢植えでそこそこの条件を与えて、こじんまりと、それでいて料理に使える位に便利な山椒として、できるだけ長く育てる…と言うのが希望になるのではないかと思います。
そんな山椒の木ですが、春先になるとホームセンターの園芸コーナー等で手軽な価格で苗木が販売されたりします。冬場も専門店では販売されていますが、落葉樹なのでただの棒が土に植わっている状態で「売れないので裏に置かれている」事が多いようで、声をかければ売ってくれる事もあるようですが、お勧めはやはり春先のお手軽価格の山椒だと思います。
まずは山椒の入手ですが、とりあえずざっくりと園芸店で出回っている山椒の品種を記しておきます。
1)葉山椒…多分、一般には山サンショウと呼ばれている物だと思います。雌雄異株(見分けは困難)なので、雌雄の株が揃っていないと結実はしませんが、葉の香りが強いので「葉山椒」として販売されているのかなと理解しています。小苗が安く売られているのでどうしてもこれを結実させたい方は6株位買って固めて栽培して花芽を咲かせて見分けるしかありませんが、あまり意味はないと思います。
2)朝倉山椒…品種改良されたもので、棘がなく単株で結実します。成長が早くやや大きめの実がたわわになる(らしい)ので、実取りが目的なら雌雄異株の山サンショウよりもこちらがおススメです。が、葉の香りは山サンショウが勝っていると思います。実生株と接木株があります。20cm~50cm位の株が1000~3000円位で販売されています。最近では接木の台に秘密がある頑丈な「スーパー朝倉山椒」と言うのも販売されているようです。全く初めての方にはこれが良いかも…。
3)ブドウ山椒…朝倉山椒の優良株を更に改良したものと言われています。大粒の実がブドウのようになる(らしい)事からこの名前になったようです。100%接木株になりますが、接木の朝倉山椒と並べられると、素人にはほぼ区別がつきませんので「ブドウ山椒」として販売されている物を信じて購入してください。少し割高で栽培難易度は朝倉山椒よりも上に感じますが、育ててみる魅力を感じる山椒です。
4)花山椒…花を利用する山椒のようです。私は園芸コーナーで販売されているのをまだ見た事がありませんし、あまり興味がないのでここでは割愛します(笑)。
さて、普通に入手できる種類はざっくりと上記の1)2)3)です。
私はこの超A級に難しいと言われるこれら山椒を「鉢植え」で、どこまで育てられるかに挑戦してみました。
とりあえず何もわからないので、栽培実験用として通販で50cm位に育った「ブドウ山椒」を3000円程で購入しました。実験用にするには勿体ない感じの見事な株でしたが、気分は観葉植物です。基本的にそんな感じでOKと言うネット情報もありましたので、超A級とは言う物の、長年観葉植物をあれこれやってきた私は、ちょっと山椒をナメていました。
私は強烈に西日が差し込み、3年間すくすくと育っているウンベラータやフランスゴムが並んでいる窓際に、そのブドウ山椒を置きました。秋口であったという事もあって、アゲハ蝶などの幼虫が付くのを避ける意味もあったので「部屋で育ててみよう」と思ったのです。更に補助光として育成用のLEDライトも上部から10時間当てて光合成を促しました。
その1週間後に20cm位の朝倉山椒の株を2つ追加購入し、1つはブドウ山椒と同じく部屋で、これを朝倉山椒Aとします。もう一つは日当たりのよい南向きの自宅の玄関口に置きました、これを朝倉山椒Bとします。
山椒は移植、つまり植え替えを嫌う植物のようで、ほとんどの場合が植え替えを機に枯れてしまうようです。なので、これら3株は植え替えずに植え替え適期とされる休眠期の真冬まで、柔らかいポットのままでそのまま栽培する事にしました。
昨年の秋は、ダラダラと暖かい日が続いたからでしょうか、購入後からポロポロと落葉して殆ど棒状になっていた玄関口の朝倉山椒Bが10月突然新梢を出し始めたのです。
一方の部屋の中でぬくぬくと過保護に育てているブドウ山椒と朝倉山椒Aは、そのままの姿で成長が止まったままで、葉も次第にポロポロと落ち出してきて、朝倉山椒Aの方は購入後2週間ほどで完全に棒だけの状態になってしまいました。朝倉山椒Bは新梢を出しているのに、全く違う状況です。その後、落葉が止まらないブドウ山椒の方を試しに、朝倉山椒Bと同じ条件の所に持ってきて様子を見てみました。
結果は対称的な物でした。
朝倉山椒Bはひょひょろと新梢を順調に伸ばして一気に大きさが40cm程にもなったのに対し、ブドウ山椒は落葉が止まらず、ついに成長する事もなく棒だけ状態になってしまいました。ちなみにブドウ山椒の方の写真が、なぜか紛失してしまい、ありません…。(;^_^A
葉に安定した物が感じられませんが、新梢を伸ばすという事は、この朝倉山椒Bは環境に順応しつつあるという事を示していると思われました。観葉植物の経験上、購入後=条件が変わった後の新葉は変形した物が多いので、この状態であると思いました。
一方気になるのは朝倉山椒Aとブドウ山椒です。成長せずに落葉だけした状態は、環境変化に適応できていないかも知れないのです。とりあえず、ブドウ山椒はそのまま冬を越させる事にし、朝倉山椒Aも葉が無くなったので、実家の北向きの1日数時間だけ日が差す場所で冬越しをさせてみる事にしました。
~数か月後~
結果から申しますと、朝倉山椒Aは4月上旬になっても新梢を吹くことはありませんでした。念のため幹の部分をハサミで切ってみた所、完全に乾いていましたので枯死と判断しました。
その1か月後の5月中旬にも、長らく棒だけ状態だったブドウ山椒も、思い切って幹の上部をカットした所、完全に乾いており。これも枯死と判断しました。
教訓としては、強い光が差し込むと言ってもガラス越しの光では山椒の栽培には全く使えない光量であった事です。また育成用LEDライト(よくある赤青の物ではなく、観賞用にもできる白系の物です)で補助しても光量は足りない事が分かりました。つまり、山椒は野山で育つというその性質上、室内や温室での飼育には向いていない事がこの2株の山椒が教えてくれました。
私の実感としては2週間ほど室内で過ごさせると、その山椒は殆ど枯死するのではないかと思いました。
一番良いのは、購入時にどのような環境下で育ってきた山椒かを聞くことができればよいのですが、ホームセンター等では無理ですので、自分で想像するしかありません。と言ってもある程度株から読む事ができます。葉の色が濃い色をしていれば1日数時間の日光下や弱光下で育った可能性が高いです。この場合は、大きい株である程日当たりのよい直遮光に置くと、順応できずに一気に葉を落として株が弱ってしまいます。販売されているのは殆どこの感じですので、他の鉢植えの陰になる場所とか、明るい日陰か午前中または夕方だけ日が当たるような場所で育てるのが良いと思います。今回のブドウ山椒がこれでした。
葉色が黄緑色や、やや薄い場合は強い日光下で育っている株と思いますので、南側の陽光がよく当たる場所においても適応できると思います。春先から売れ残って、秋の店の片隅に追いやられていたような株が割とこの感じです。今回の朝倉山椒ABは正にこれでした。こちらは逆に半日陰などに置くと成長が止まって、やはり株が弱ってしまうようです。
こうしてみると、ブドウ山椒も朝倉山椒Aも、私の対応が逆でまずかった事が分かりました。
さて、一方の朝倉山椒Bの方は、日当たり良好な場所で12月初旬にはその成長を止め、落葉しましたが、春先の3月上旬から再び成長をはじめ、安定した新葉を出しながら現在は50cm以上に成長しています。
注目すべきは、春先一番に花芽を出した事です。これが結実すれば面白いのですが、まだ株が若いので厳しいかなと言う感じですね。しかしこれは、完全に今の環境に順応した事を示しているようです。こちらは成長が再開した辺りで、ポットから二回りほど大きな駄温鉢に植え替えを行いましたが問題なく今も成長しています。
植え替えなどに関しては、次回に持ち越したいと思います。
また、春先の新株シーズンに当たって、葉山椒3株、朝倉山椒1株、ブドウ山椒2株も追加で購入し、それぞれ違う条件下で栽培実験を行っています。超A級に難しいと言われている山椒栽培の所以が、段々と分かってきます。