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フリーターン雲台というのを知っているか?

本題の前に、2日連続で色々とやらされた揚げ句最新のiOS10.2がインストールされたiPhoneでは「使えない」という判定に至ったニコン様のやっつけ・・・ぢゃなかった渾身のSnapbridgeですが、予想通りAppStore内のSnapbridgeのレビューが荒れに荒れている。
ニコンのアナウンス通り、iOS10.2ではBluetooth接続もWi-Fi接続も安定せず、GPSと時計の同期程度なら何とかできるが、肝心のJPEG画像の転送は100%できないというのが現状のようで、これをウリにした販売を行っているD5600やB700等のカメラユーザーからのレビューは正に怨嗟に満ちた炎上状態だ。撮影目的に少し違うベクトルを持つD500ユーザーは、現状あまり必要とはしていないようで、それほど批判をするユーザーはいないようだが・・・。どっちにしても経営陣に無理くりにせっつかれて、めんどくせぇなー的に現場が取って付けた機能は、事後のサポートに関しても身が入るはずもなく、最終的には顧客のネット炎上を招くのである。そんな事例はニコンも今までに何度か対岸の火事として目の当たりにしてただろうに、それが今回は己の頭上にも降りかかってきたというわけだ。(^_^;
なお、多くのユーザーが指摘している事実なので、
「すんなり繋がったし、問題無く使えていますよ?」
みたいに他人事のように高評価レビューをしている方も、iOS10.1で使っているだけか、今はたまたま上手く行っているだけで、何かの拍子に同じ状況に陥ると思われる。その時には批判レビュアーな方と同じくフォールダウンする事になるのだろう。笑
 
さて本題。
世の中には多くの趣向を凝らした雲台が各メーカーからリリースされているが、フリーターン雲台というのを知っている方はどれだけいるだろうか?
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こういう形の雲台で、一見普通の3way系に見えるが、よく見るとハンドルが一つで、何だか特殊な形状をしているのがお分り戴けると思う。
どういう風に動かすかというとパン棒1本を緩めると上下左右にフリーに動きます。で、パン棒を向こう方面に倒しきるとカメラは綺麗に縦位置になるようになっています。更にカメラ座の下のプレートもレバーを緩めると独立して左右方向のみ回るようになっており、三脚で水平が取れていなくても、パン棒によるフリーターンで雲台レベルで水平を取り、プレートの左右ターンで撮影が出来るようにもなっている。
またフリーターンも、パン棒の緩め方で最初に左右方向だけが先に緩み、更に緩めるとフリーになると言う具合なので、かなり微妙な画角調整も出来るようになっている。
このフリーターン雲台は、SLIKがまだ白石製作所だった頃に考案されており、SLICK MASTER TRIPODと言う三脚に搭載されて販売された。「SLICK」指摘したい気持ちは分かりますが綴り間違えていません。SLICKです。知るは一時の恥ですね。詳細はネット参照の事。
このSLICK MASTERという三脚は大きく2種類作られており、一般向けの上記銘柄とプロ向けのDELUXEがありました。今はどちらも中古で3000円前後で売られているようですが、脚部も雲台も少し違っています。
ちなみにこれがDELUXEです。
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とある中古サイトから拝借した写真ですが、厳密に言うと脚の伸縮ネジはシルバーで先は石突がありますが、この製品は修理したのか石突もなさげで変わっているようです。またパン棒もノーマル用の短い物に変更されています。ノーマルの写真がなくて恐縮ですが、ざっくり言うとセンターポールと脚部を繋ぐビームがあるのがDELUXEの脚です。雲台はカメラ座全体に滑り止めが施されていればDELUXEで丸く滑り止めがされていればノーマルの雲台です。またパン棒もDELUXEは長いです。
中古品は前所有者がこの組み合わせを変えていたり、雲台は別物だったりとバリエーションがあります。また、報道関係者をはじめとするプロが酷使している個体が多く、特にDELUXEでは当時のオリジナル品でピカピカの上物はなかなか中古屋にも出回っていないようです。もし中古屋で特に上物のDELUXEを見つけたら、恐らく3000円~4000円で販売されているでしょうから、現行品のフリーターン雲台の半額ですので、思い立ったら購入して使ってみるのもいいと思います。なお、雲台と脚部が一体ですので、雲台と脚にSLICK MASTERの金銘板が入ってシリアルナンバーが打刻されていれば当時のオリジナル雲台です。
これは私が以前中古屋でたまたま見つけたDELUXEです。
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死蔵品だったようで、ちょっと自慢したくなる程の上物でした。こんな感じで金色の銘板が打ち付けてあり、上部は全面滑り止め付きでパン棒も長い物が付いています。今はケンコーのスカイメモSというポタ赤による星景撮影用に使用しています。これがあると極軸合せに微動雲台等が不要になります。
そんな歴史の長いフリーターン雲台ですが、実はこれと同型のフリーターン雲台も、この三脚を祖先に持つのであろう脚も現行品でSLIK MASTERのシリーズで販売されています。なおフリーターン雲台はSLIKのジャパンローカルなオリジナル品で、昔も今もSLIKしか作成していません。
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これが現行品です。フリーターンの利用価値を更に見いだしたため、自由雲台が付いているマンフロットの475B(ネジ変換アダプタが必要)に付けようと追加購入したものです。SLIKのサイトには掲載されている物はクイックシュー形式の大小2種類のみとなっていますが、オリジナル形式のこの雲台もSLIKの現行品としてAmazonやヨドバシ等の通販サイトでも7000円前後で販売されています。
形状はオリジナル品と同じです。DELUXEの方の雲台でパン棒は短い物が付属されていますが、長いパン棒もオプションで今も販売されています。パン棒は長い方が操作の回転半径が大きくなりますので微動しやすくなるのと、支点と力点が遠くなる分少ない力で操作ができるようになります。
これが新旧の雲台の違いです。
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現行品の脚は、とりあえずSLIK AMT PRO 500DX IIIに載せていますが、フリーターンの機能をフルに使おうと思うと、実はAMTシリーズやカーボン系の軽い脚は使わない方が良いです。後述しますが私の場合最終的にヘビー級の475Bに載せるのはその為です。
 
広く知られているのか、ユーザーが少数なのかは分からないが、とりあえず使い物にならないクズ以下の雲台だとネットでレビューする方が多いのには驚きです。何故そういう事になるのだろう?とレビュアーの傾向を探ってみると、どうやら使い方その物をビデオ雲台などと混同して間違った使い方をしている事が多いようでした。
細かい使い方は以下のブロガー様が、分り易く解説されていますので、一読の価値ありかと思います。
http://blog.goo.ne.jp/bongo-pete/e/eb25816b58320d2d65515e1f765d380d
あと、上記の記事にはないのですが、雲台に特に長玉を付けたカメラを載せる時ですが、前後バランスを取るように載せると、パン棒を倒しきって縦位置にした時、カメラ座のターンテーブルを緩めるとジンバル雲台のようにカメラを振る事が可能になります。長玉の場合は大抵は三脚座があると思いますので、そのままカメラを横位置にする事も可能ですので、使い方は更に広がる事になります。ただし前後バランスを取るにはカメラ固定をアルカスイス互換にした方が良いですので、その場合は雲台にクランプを取り付ける事で解決すると思います。あと、全体の重量がアンバランスになりますので、だからこそ重いがっちりとした脚が必要になるわけです。私が475Bを脚に選んだのはこの使い方をしたかったからです。
 
フリーターン雲台でよく聞かれるのが、オイルの粘りとカウンタースプリングの強さですが、フリーターン雲台はビデオ用ではなくスチルカメラ用に考案された雲台です。ですからオイル抵抗もカウンタースプリングも入っていません。ですからパン棒を緩めると前後方向にカックンしてしまうのですが、そこは海外の三脚メーカーを手本に、長年コダワリ抜いてきたSLIK社のジャパンクオリティです。ビデオ雲台に匹敵する上下左右の滑らかな操作感、瞬時に縦位置に移行できる機動性、程よいフリクションがパン棒1本の操作で3wayを凌駕する微動性を実現しています。更にジンバルの動きも再現できると言う発見をしたため、この度もう一つ追加購入するに至ったわけですが、これが7000円前後の雲台であると考えるとかなりお得感のある雲台と言えるのではないかと思います。
耐荷重はオリジナル形状の物は大型三脚を想定しているようで7kgとなっています。
クイックシュー形式の物は現行の小さい方が3kgで、旧製品の大きい方は5kgとなっているようです。お奨めはアルカスイス互換クランプなどの装着を考えると、シンプルで耐荷重の大きいオリジナル形状ですね。
しかし7kgとなると大口径単焦点の大砲には少々キツい耐荷重と言えますね・・・。ちなみに私はシグマの150-500mmとD500。クランプ、プレート、照準器を足しても5kgに満たないため、475Bの堅牢さも手伝ってかなりしっかりと保持してくれます。野鳥撮影真っ只中の季節ですので、とても楽しみですが上記でも少し触れましたがマンフロット475B等の海外製三脚に本製品を載せる場合は注意が必要で、ネジ変換アダプタが必要です。咄嗟に思うのが数百円のネジですが逆です。475Bが太い3/8”で、雲台が細い1/4”ですからマンフロットの120かETSUMIのE-6750かE-6599が必要になります。ここは注意が必要ですね。475Bの雲台受けは60mmありますのでE-6599を購入しました。実用はまた書きたいと思います。
 
数多の間違った使い方による短絡的なレビューで、未だに一般受けしないフリーターン雲台ですが、そんなお粗末な物ならこれだけの長い期間SLIKも作り続ける訳がありませんし、ましてやプロの中でも一発勝負の連続である報道カメラマンが使用するはずがありません。正しい使い方を行い、慣れるとこの上なく便利なフリーターン雲台、風景専門で3wayを使っている方は特に、一度使ってみると良いと思われますが、いかがなもんでしょうか?