記事一覧

FX機の場合と、DX機の場合。

一眼レフカメラを使い、超望遠を必要とする被写体を追い始めると、その憧れの存在として大口径単焦点レンズという存在が物欲として湧き出てくる。それらのレンズは各メーカーにおいてはハイエンドとされ、300mm/F2.8で50万円以上、400mm/F2.8では100万円以上、600mm/F4では150万円と言った具合に、中古の軽自動車なら2~3台買えるような高額な物になってくる。
これらレンズにはメーカーの威信をかけた技術の粋が盛り込まれ、その描写力は圧倒的だ。そりゃあこれだけの対価を払って手に入れるのだから、その性能は当たり前と言えば当たり前であるが、こういう物にもやはり弱点がある。

それは重さ。

そう、大口径単焦点は図体が大きい分だけ、重たいのである。
一番短い300mm/F2.8でも2.9kg、600mm/F4ともなると5kgを超える・・・。つまり、長時間の手持ち撮影は、私的には絶対に無理。っていうか首から提げているだけで中世ヨーロッパの拷問状態に見える。つまり、このレンズを使うには、必須アイテムとして三脚が必要になり、手荷物の重量が増えるだけでなく、咄嗟の被写体との遭遇時にも機動性に劣る結果になる。つまり決まり切った撮影には使えるが、室堂へ行ってライチョウやイワヒバリを撮影するというような場面には事実上使えない。実際に3000m級の山行に行くと分かるが、単体で3kgの撮影機材など持ち物としてまず考えられない。70-200mm/F2.8でさえも、現場を知っていれば持って行くには躊躇するはずだ。っていうか3000m級の山では一眼レフカメラを持っているだけで珍しい存在になる。私はDX機だがこれがフルサイズ機になってくると私でさえ

「カメラでか! この人ちょっとアレじゃね?」

って思ってしまう。まぁ、山小屋の周辺でゴソゴソするだけなら話は別だけど・・・。
一方で警戒心が薄いライチョウはともかくイワヒバリ等になると小さい上に警戒心が強いので、やはり長いレンズが欲しくなる。つまりは手持ち撮影が出来る軽くて長い撮影機材が恨めしい程に欲しくなる訳である。

まぁ、
3000m級の山の上の話はともかくとして、撮影機材が重くなると付随する機材が増えるだけでなく、咄嗟の撮影にも対応出来なくなるというデメリットがあることだけは知っておくと良い。

さて、ここで本題。
やっぱカメラはフルサイズだろ。ってなもんで、1台目のカメラとしてフルサイズを買ってしまった人が、野鳥なりの撮影に挑戦することになり、600mmの焦点距離が欲しいとなった場合どうなるか。これは300mmの焦点距離のレンズに2倍のテレコンバータを装着するか600mmの超望遠レンズを購入しなければならなくなる。結論から言ってしまうと前者の方法はズームレンズの場合は全くお奨め出来ない。2倍のテレコンは焦点距離が2倍になるというお得感もあるが、それ以外の部分も全て2倍になるという事実がある。具体的には300mmでF4.5だとするとテレコン装着で600mm/F9.0のレンズになると言うことだ。で、そのレンズの一番綺麗に写る絞り値がF8であるとするならば、テレコン装着時にはF16まで絞り込まないと、同じ描写にはならない。更に粒状感も2倍になるので撮影後の画像処理もそれなりに必要になってくるのだ。
この理屈から行くとサンニッパのレンズでも2倍テレコンを入れると600mm/F5.6となるものの、F5.6で最高描写だとすればF11まで絞る必要が理屈として出てくるのだ。ヨンニッパに2倍テレコンを入れれば800mm/F5.6になるが純粋なそれとは対等にはならないという理屈がここにあるのだ。だからロクヨンもハチゴローもその存在理由があるのだ。サンニッパは50万円以上するレンズで描写力も優れているので2倍テレコンを入れてF6.3辺りで撮影してもそれなりの描写をすると思われるが、はっきり言ってギリギリの所だと思われる。なお、ネットに小さい画像で掲載する分には全く問題は無いだろう。でも、50万円以上出してそれ・・・って、ちょっと悲しいですね。
と言うことはやっぱり最終的には100万円以上だして600mm/F4のレンズを購入するか、多少暗くても600mmがあるズームレンズを購入することになる訳だ。私にはがんばってくださいとしか言い様がない。DXのクロップモードを使えば換算1.5倍の焦点距離にはなるがそれでも400mmのレンズが必要となる。400mmのレンズ、どうぞヨンニッパを筆頭にお値段と種類をご自分でお調べください。そして、がんばってください。

しかしこれがDX機(APS-C機)だと、どうなるか・・・。
ニコンの新しい機種であるD7200で考えてみよう。D7100でもいいよ。この場合はマルっと300mmの単焦点なりズームレンズなりを買えばOKです。この2機種には1.3倍クロップモードが付いていてフルサイズから考えると換算2倍の焦点距離になる。300mmのレンズだと450mm。クロップで600mmになる。もっと言うとニコン様が最近出した300mm/F4のフレネルレンズをD7200に装着し1.3倍クロップモードにすると1500万画素のカメラに600mm/F4のレンズを装着したことになるのだ。重量はカメラとレンズで1.4kg程度。充分に手持ちでも振り回せるシステムである。しかも遠慮無しにレンズの一番美味しい絞り領域を使うことも出来るというオマケ付きだ。
要するに、DX機に力を注いでしまうと、収益性の低い機材で、こういう事が出来てしまうので、ニコン様はもう出来ればDX機の開発を推し進めたくないと言うのが本音なのだろうという勘ぐりをしてしまうのである。だって、大口径単焦点なんて必要なくなるし・・・。
しかし我々ユーザーからすれば、こういう領域でこそDX機の本領が発揮されるという物なのです。
私が、フルサイズにカメラに600mmだの800mmだのの大砲レンズを抱えてカワセミだの何だのを撮影している人を「凄い」と言いつつも、実は心の中では「××?」って思っているのは言うまでも無いです。回収の見込みもなく、行き着く先もない物に、ようやるわ・・・って言うのが正直な所。
でも、その訳の分からないブランド感をあおり立てて、DX機の性能を上げようとしないニコン様のやる気なさは批判されるべきであると思う。

私がなぜここまで軽量のシステムに拘るかというと、今までの経験の中で、大口径の方達を差し置いて、軽量システム(D7000+シグマ150-500mmズーム)の私だけが撮影出来たという事実が事実としてあるからだ。私は移動中も助手席なら膝の上、運転中なら助手席か後部のすぐに手に取れる場所にカメラを置いている。だから車を停止すればその数秒後にはシャッターを切れるのだ。しかしフルサイズ大口径組はそれが出来ない。
「私はいいから先に行け!!」
と言う声を掛けてくれる余裕もないので、しょうが無く結局私も撮影するのに気を遣ってモタモタするフリをする事もある。それで千載一遇の撮影チャンスをミスミス逃してあげた事もある。
はっきり言おう。デカいシステムを持った人間と撮影に行くと、私は迷惑なのである。

「どんな機材を使おうが、撮った物が勝者。」

と言うのは、こういう事だ。
千載一遇のチャンスを求める、或いは可能性のある撮影の場合は私は一人で行く事に決めている。でかい高額機材を持ち込んで悦に入っているカメラマンの皆さん。同行の人間が必ずしもうらやましがっていると言う訳では無い事を肝に銘じておきましょう。どちらかというと鬱陶しがっている可能性があり、気を遣わせている事も大いにしてあるのだ。サブカメラシステムを必ず持っているべし。