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光触媒がふたたび世間に・・・。

「光触媒」という言葉を聞いた事があるだろうか。
今話題になっているようで、最近ちょっと耳にした・・・という方もいたり、ひょんな事から外壁工事の際に奨められたりしたという方もいたりするのではないだろうか。
この光触媒、実は20年近く前になるが私はこの話に絡んだ事がある。当時も「塗って置くだけで汚れが取れる」という触れ込みで結構な話題になり端から見ていると正統派、勘違い派、詐欺派の業者がそれぞれの思惑の下で、それぞれの営業展開を行っていた記憶がある。
私は直接商売には絡まなかったが、説明だけはしつこい程に聞かされたので「光触媒」とはどういう物かと言う事だけは知っています。
今日はこの「塗っておくだけで汚れが取れる光触媒」の正体とは何なのかについて、サパっと解りやすく書き綴っておきたいと思う。
色々な広告やセールストーク等でミソが付いている、或いは「私はもう知っている」と思っている方も、一旦脳みその「光触媒」の部分だけを白紙にして読んで貰えればと思う次第です。
 
まず「光触媒」というのは、そういう言葉であって薬剤の名前ではありません。その名前の正体は「酸化チタン」という薬剤です。
  
1)光触媒=酸化チタン
 
まずこれを頭に入れてください。
次に、酸化チタンは一体何をしてくれるのかという機能ですが、単純に「水」を「酸素」と「水素」に分解するだけです。
 
2)酸化チタン=水を酸素と水素に分解する
 
以上です。
この2つを覚えると、光触媒の8割を理解した事になります。
で、酸化チタンはこの「水」を「酸素」と「水素」に分解する材料として、太陽光などの「光」を利用します。つまり・・・
 
<結論>
酸化チタンは「光」を材料にして水を酸素と水素に分解する機能を持つ。だから光触媒と呼ばれている。
 
と言うわけです。光触媒についてはこれ以上でも以下でもございません。これ以外の機能があるわけでもありません。~型とか~タイプとか事細かに言われても、要するに光触媒とは結論の通りの機能です。それ以外の機能があるとしたら、それはもはや酸化チタンではなく「別の物」です。
 
では、その酸化チタンを外壁などに塗布すると、どうして汚れが勝手に落ちるという理屈になるのか・・・。
それは、以下のプロセスに拠ります。
 
1)酸化チタン(光触媒)を塗る。
2)そこに汚れが付着する。
3)雨が降る=水分が付く。
4)太陽光が当たる。
5)酸化チタンが雨水(水)を酸素と水素に分解する。
6)分解された酸素(活性酸素)は汚れと結合する。
7)もう一度雨が降る。
8)酸素と結合した汚れが洗い流される。
9)2)に戻る。
 
という事でございます。
光触媒が機能しているプロセスは5)です。
でも消費者的に重要なのは3)と7)です。
このプロセスを経ないと、光触媒は絶対に汚れを落とす事はできません。重要なのは光触媒が「防汚」という機能を発揮するには「光」だけでなく「水」も必要であるという事です。
その「水」は、光触媒が水を分解して汚れと結合する為の活性酸素を生み出す為の「水」と、汚れを洗い流す為の「水」が必要なのです。これを見落としてはいけません。
 
さて、
光触媒が実際にどういう場面で活躍できるかというと、外壁やエクステリア関連の場合は、太陽光も当たるし雨風も当たるので、そういう場所であれば長い目で見れば効果を確認できるようになるかもしれません。逆に陽光は当たれど雨がかからない、又は逆の場合はそこだけ汚れが残ります。なので、効果の出る場所をよく考えて塗布する必要があります。でないと数年後に予期せぬツートンカラーの建物になってしまう可能性があります。
ちなみに鳥の糞とか、泥ハネ、テープの貼り跡等は光触媒では除去する事はできません。また、光触媒が塗布されている上から光触媒を塗布する事もできません。経年劣化で完全に前の光触媒が無くなっているか、除去してから塗布し直す必要があります。耐用年数は外壁塗布放置で約15~20年。フッ素樹脂の耐用年数とほぼ同じです。
しかし、一般消費者にとって重要なのは室内での使用品に光触媒は有効かどうかと言う点でしょう。最近では光触媒で抗菌・抗ウイルス効果を謳った商品も目立ってきましたので、実際はどうなのかと気になっている方も多いでしょう。
まず、光触媒としての酸化チタンが蛍光灯やLED灯の弱い光でも機能するのか・・・と言う点。これは、今も開発と改良が続けられているようですが、正直言って「どうなんだろう?」という感じです。
それと分解と洗浄の「水」をどう調達するのか・・・。
室内の壁などなら雑巾で水拭きも出来ますが、湯沸かし器の上面とかクーラーの吹き出し口とかはそうそうやってられないですよね。そもそもその手間を省く手段として「光触媒」が期待されている面もありますしね。効果を出すのは難しそうです。
次に思いつくのがスマホなどの画面。これは画面からの光がありますので申し分ないと思われますが、はっきり言って「光触媒を塗ったから大丈夫」って使い続けるよりも、こまめにアルコール除菌した方が清潔ですよね。私はそうしています。
あと、マスクなどの衛生用品。これは消費者庁から指導が入った商品もあるようですが、はっきり言ってマスクが光触媒にとって完璧に機能できる環境であるとは私は思えないんですよね。確かに陽光も当たれば吐く息で水分も供給できますが、これもわざわざ光触媒を使わなくても・・・という気がします。
結局アイテム類には光触媒と言うよりもこまめに除菌アルコールで消毒したり交換するのが一番ではないかと思います。そうしないと本末転倒になってしまうのでは無いか・・・と思います。
まぁ、その辺は消費者の方々の判断という事になるのですが、「光触媒」の機能の根本を理解していれば、ちゃんとした説明がなされた商品なのか、胡散臭いセールス商品なのかを判断する事ができるのではないかと思い、今回はちょっと書き綴ってみました。