記事一覧

海水魚水槽の作り方。

ファイル 40-1.jpg

今後、恐らくは圧倒的に恵まれた環境がない限りは、二度とその世界に浸る事はないであろうと思われる「海水魚飼育」。
実は私、8年間位海水魚においての飼育経験がございまして、まぁ色々とやりました。オリジナルの波発生装置も造りました。お金も今思うとバカじゃないかと思うくらい注ぎ込みました。で、最後に海水魚飼育のコツというかやり方というか、こういう物なのだ…と言う事を身を持って知った所でマリンアクアリストを引退しました。8年間、息も切らさず色々な事をやってみた結果得た最終結論は、「海水魚は飼うよりも見に行け。」と言う事でした。

しかし…。

ブームは下火になったのかどうかは知りませんが、ペットショップに行くと以前と同じように海水魚が販売され、同じように客があれこれと物色し、店員にアドバイスを受けながらも、適当に安価な機材を購入してゆく…。
その度に私は

「間違いなく1ヶ月以内に死滅水槽になりますな…。」

なんて事を横目で見ながら心の中で呟いております。笑

というわけで今回は、カメラとは全然関係ないんですが、成功確率95%以上(と自分で思う)の海水魚水槽の立ち上げ方を、自分への忘備録も兼ねて、ここに書き記しておきたいと思う。

その前段階として、これから海水魚飼育に挑戦したいと思ってここを読む方に、まずはじめに言っておきたい事がある。

「湯水のように金を使えないのなら、海水魚飼育はするな。」

である。かつては私も20cmキューブ水槽という狭い水槽に、海水転化させ12cmまで育ったテッポウウオを筆頭に、イソギンチャク、クマノミ2匹、レッドソックスを、小型の外部式フィルターだけでバランスを保つという奇跡もやった事はあるが、こんなのは希な話であり、基本的には掛けたお金に比例して海水魚飼育は成功の確率ははね上がると考えよう。そのお金を掛ける事が出来ないのなら、飼育者も生体も何の癒やしを受ける事もなく、お互いが可哀想な事になるので、私は飼うなと言いたいのだ。

前置きが長くなったが、気構えのある方だけ読み進めてください。
ちなみにここでは、オーバーフロー水槽ではなく、シングル水槽での飼育方法を解説する。

<用意する物>
1)水槽…容積=水量が大きい方が飼育は有利になるが、幅よりもとにかく高さのある物を選ぶ事。60cmあれば完璧。最低でも45cmは欲しい。と言う事は通常の60cmではダメという事。なぜ高さがいるかはそのうち分かります。奥行きは30cm以上なら問題ない。私はW45xD30xH45というADAのキューブガーデンを使っていました。今は絶版のようです。海水魚飼育はキューブか縦長の水槽が良い。水量は60リットル前後までが良いと思います。それ以上はお金の掛かり方が違ってくるので、もっと熟達してから…。

2)底砂…サンゴ石一択です。濾材用の粗目、底砂用に中目と細目をそれぞれ用意します。

3)密閉型外部式フィルター…ピンからキリまでありますが、水槽の全水量が1時間に7~10回程度回転する大きさを目安に選びます。55リットルならエーハイムなら2213か2236かな。ただし濾過はこれだけでは不十分ですがとりあえず必要です。

4)水槽用クーラー…なかなか高価な設備なので、ど素人程後回しにするが海水魚では必須。一番最初に買いましょう。買えないなら海水魚は諦めましょう。これが無いと維持管理は格段に難しくなり、飼い主も海水魚もかわいそうな事になる。60リットル前後だとゼンスイのZR-75Eといった比較的安価な物がある。水量を抑えたいと言ったのはこれが理由だ。余裕があればZR-130Eを買っておいた方が冷却効率は飛躍的に上がる。私なら130Eを買う。が私は2236の水流量と相性がバッチリの75Eを使っていた。130Eなら別の強いポンプがいるので、その場合はマキシジェット1000を用意し、2236のプロペラを外して非電源でエーハイム→クーラーと繋げば良い。

5)底面フィルターと網戸の網だけ…モーター付属は不要。また底面にびっしり敷き詰める必要はない。あまり小さいとモーターの吸上げ効率が下がるので、45cm水槽用以上の物で、底面積に合わせて買いましょう。90cmなら45cm用を2個買うと良い。網戸の網は底面フィルターにサンゴ石が入り込んでモーターが詰まるのを防ぐ為に包む用に使うのと、底砂の仕切りでも使うので、多めの1m四方位は用意する事。

6)外部式ポンプ…底面フィルターと組み合わせる。私はカミハタのオーシャンランナー2500を使っていたが、明らかにオーバースペックに思えたので、後にマキシジェット1000に交換しています。オーシャンランナー2500は別の目的に転用したが普通は不要。マキシジェットは水陸両用の安価なポンプなのでお奨めだが、このテの小型ポンプは陸上使用すると結構音が立つので水中で使用するようにした記憶がある。

7)ライブロック2kg~3kg…海水魚飼育では必須アイテム。生臭い物は古いのと管理が悪いのでNG。磯の匂いがする良質な物を購入しよう。良い物は石灰藻という赤い苔が岩面に色を塗ったようにたくさん生えており、藻海老やケヤリなどの生物感も多い。ただ招かざる客(ウミケムシ、ウミウシ、シャコ等)も付いてくる事があるのできちんとキュアリングされた物を選ぶ目を養う事が必要だ。間違っても真っ白のただの死珊瑚を購入しないように…。
ちなみに2~3kgは最小限の量。最終的には6kg位は入れたい所だ。要するにキープ時は水量の1/10位、立ち上げ時はその半分位を目安にすると良い。

8)人工海水の素…水道水をあっという間に海水に変えてくれる魔法の塩。ミネラルが含まれているので普通の天塩を溶かした水とは違うよ。

9)RO水…水道の水は藻類の素がたくさん溶け込んでいるので、そのまま使うとあっという間に水槽内は緑色の苔だらけになってしまう。そこで純水と言われるRO水が必要になる。この水以外は絶対に水槽には入れたくないので、安定的に供給出来る購入先を確保しておこう。初期は60リットルいる予定なので後の足し水も考えて最初は100リットルは用意しておこう。

10)水槽用ヒーター…クーラーに繋げられる場合はサーモスタットは不要な場合が多いが、その機能がクーラーに無い場合はサーモスタット付きを買う事になる。サーモスタットは必ず電子式の物を購入の事。

11)プロテインスキマー…水槽内の富栄養化を防ぐと同時に海水に大量の酸素を溶かし込んでくれる機材。RedSea製の物が有名だが水槽内に本体(直径6cm位の筒)を入れるのでレイアウトや見た目に響くのとエアポンプが必要になる…ので私は後に外掛け色のPrizmSkimmerに変えました。海水は酸素が溶けにくいのでエアレーションが必ず必要だ。

12)メタルハライドランプ…海水魚飼育には必須になります。イソギンチャクやサンゴは買わないよ~という方もライブロックが入る以上は光合成の為に必要になります。点光源ですので太陽光のように水の揺らぎの印影ができます。海水魚ではブルーが強い20000Kを使いたいですが10000K以上なら可としましょう。100w程度の物なら大丈夫です。

13)小道具…水温計、比重計、カルキ抜き。

大体ここまで用意したら海水魚の飼育が可能になります。
どうでしょうか?お店の店員の話とはずいぶんと違ったのではないでしょうか。電卓を叩いてみてお金が掛かりすぎる!!って言う方は、前述のように「海水魚は飼うよりも見に行け!」という教訓に倣いましょう。「それでも私は飼育してやる!!」という方は以下に立ち上げ方を記しておきます。

 
<水槽の立ち上げ方>
1)底面フィルターを網戸の網で包みます。輪ゴムの使用は私は不可としたい。とにかく包んでサンゴ石が入り込まないようにしたら、筒を取り付けて底面に置く。筒を刺した所を少し鹿渡に寄せても構いません。ど真ん中でなくても良いと言う事。

2)サンゴ石の中目を5~7cmの高さに敷きます。そう、結構多いんです。これを投入したらもう後戻りはできません。

3)その上に網戸の網を全面に敷き詰めます。

4)次に細目のサンゴ石…と行きたい所ですが、その前にひと作業します。適当なライブロックをカナヅチなどで適当な大きさに砕いてください。あまり細かくすると網戸を抜けてしまいますので3~5cm位の大きさで良いです。砕いたらそれを網戸の上にばらばらっと適当にばら撒きます。敷き詰める必要はありません。適当でOKです。これこそが誰も教えてくれない失敗しないミソなんですね~。これで底床内にもバクテリアがガンガン湧くという訳です。

5)ばら撒いたライブロックの上から細目のサンゴ石をこれまた6~7cm位の厚さになるように敷きます。底砂の厚さは12cm前後になります。この分厚いライブロック添加済みのサンゴ層が後に強力な濾過効果を発揮してくれます。また、この厚みが水槽レイアウトを楽にもしてくれます。シングル水槽の場合は、これだけのサンゴの濾過層を確保する必要がある為、最低でも45cm位の深さのある水槽が必要だったわけです。

6)水温27度の人工海水を水槽の半分位まで入れます。適温でないとサンゴ層内のライブロックが死んでしまいますので気を付けましょう。

7)水が入ったら水槽内のレイアウトを作成します。一番楽しい行程ですが悠然としている暇はありません。既に水槽には生物が入っています。手早くライブロックを組んでレイアウトを完成させてください。フィルター類のホースやストレーナーの配置も一気に行いましょう。プロテインスキマーが外掛け式の時は、後回しでOKです。

8)底面ろ過から出していた吸込み口にポンプの吸い込み側のホースを突っ込んで、底面ろ過から水を吸上げるようにします。吐き出しは、とりあえず今はそのまま水槽に戻す形で良いでしょう。(後述)

9)外部式フィルターの吐き出しはクーラーに接続し、クーラーの吐き出し水を水槽に戻すようにします。

10)海水を水槽の規定量まで入れ、ポンプと外部フィルターを起動します。クーラー、ヒーターの電源も入れましょう。これで水槽が起動しました。感動の瞬間ですね。

11)最後に照明のセットです。真ん中を照らすのですが、あくまでメタルハライドランプの目的はライブロック、後に入れるであろう海草、イソギンチャクやサンゴ類の光合成の為です。そこを意識してライトを当てましょう。100wの光量なら、60sm位までの水槽なら満遍なく照らせると思います。タイマーを使って1日8~10時間、朝から晩に照らしてあげましょう。

これで水槽は完全に起動しました。あとは立ち上がりまで待つのみです。

と言う感じですね。
早速魚を入れたくなる訳ですが、すぐに入れると必ず死にます。魚が可哀想です。ここはグッと堪えて水が安定するのを待ちますが、3日目辺りでデバスズメを3匹程入れてください。これはパイロットフィッシュと言って、水の様子を計る為の生態です。なぜデバスズメかというと、安いからというのもありますが、それ以上に大人しいからです。後に本命の生体を入れる際に、縄張り意識を主張して影響を及ぼす事がほぼ無いからですね。ルリスズメなどを入れると気が強いので後から入れた魚がボロボロにされたりしますよ~。

パイロットのデバ達は、調子が良ければそのまま生き続けてくれます。ちゃんと餌もあげてください。当然糞をしますが、その糞から出るアンモニアがバクテリアの繁殖を促してくれるのです。そう、目の前にはミニマムな自然の営みが広がっているのです。

さて、本命の魚やイソギンチャクはいつ入れられるのか…?

参考書や店員は決まって1ヶ月程度…という事を言っているようですが、実際は1ヶ月程度では水槽は立ち上がっていません。完全に立ち上がるのは1年後だと思ってください。それまでは何を入れても、特に高価な生体ほど早く死にます。イソギンチャクはおろか珊瑚なんて以ての外です。
こう言うと、あまりに気が長すぎて嫌になってしまうと思いますので、特別に1ヶ月後パイロットフィッシュが2匹以上生きていたらなら1尾500円までの魚1匹。半年後も全部無事なら1尾1000円迄の魚1匹とケヤリムシ2匹までならOKとしましょう。いずれも8cm以下の非肉食魚で大型になる魚は不可です。1年後も全て生きていたならば、イソギンチャク(ハタゴなど大型は不可)1個入れてもOKです。そのイソギンチャクが見事に維持出来たなら、その水槽はそこまでです。あとは海草を散りばめるのが関の山でしょう。

サンゴについて…
サンゴは出来れば入れない方が良いです。確か亜鉛だったと思うのですが、必要なミネラルの全てを水槽に添加する事が出来ない為、何をやっても必ず死にます。死ぬと水質が急激に悪化してバランスが一気に崩れるのです。上手く行っている水槽の場合は…何と産卵をしてしまう為、この場合は水槽内は白濁し、とんでもない状態になります。私は上記の水槽で産卵されてしまい、一気に水槽のバランスが崩れてケヤリ、イソギンチャク等の他の軟体生物まで死なせてしまいました。サンゴは百害あって一利無しです。

イソギンチャクについて…
買う時は濃い色の物を買いましょう。褐中藻と言う藻類を体内で飼っていて、それらが光合成をしてできた養分でイソギンチャクは生きています。この褐中藻が少ないとイソギンチャクは透けてきます。透けてくると間もなく縮小して、やがて死にます。
縮小したイソギンチャクはまず復活しません。その瞬間に水槽から取り出して捨ててしまいましょう。しかし、色が濃いのに縮小する場合があります。これは2つに分離している場合があるので水槽内をよく見ましょう。また、夜になると縮小する場合があります。

あると良い物…
底面ろ過からの水をそのまま戻していますが、途中に殺菌灯をかますと白点病などの病気の発生を抑える事ができます。と言っても私には気休め程度にしか感じませんでしたけど…。

ところで今、私は別の水槽大作戦を企てている。
今年の夏はちょっとアツいかも…なんちって。