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気が付くと金田一耕助のコスプレが可能になっていた件。

金田一耕助と言えば、横溝正史氏の推理小説に登場する名探偵だ。作家の横溝正史氏の世代からしてか、大正なのか昭和初期なのかというような時代考証で描かれた作品が多く、また池から両足だけが出ている状態で殺害されていたり、巨大な釣り鐘の中に女性が閉じ込められて殺められているなど、かなり衝撃的な連続殺人事件が次々に起こったり、特徴と個性の集大成のようなキャラも登場する。そんな難事件を解決に導くのが名探偵・金田一耕助なのであるが、この金田一耕助も結構多くの人が過去に演じている。さすがに片岡知恵蔵とか岡穰司という名前を出されても、良い間の時代でピンとくる人はほぼいないと思うので、親しみのある有名どころで言うと石坂浩二さん、渥美清さん、西田敏行さん、古谷一行さん、片岡鶴太郎さん、豊川悦司さんと言ったところでしょうか、最近では吉岡秀隆さんも演じておられますね。そんな忠臣蔵の大石内蔵助を思わせるほどに、過去に色んな俳優さんが好演されているのですが、やはり金田一耕助のコスチュームも含めたルックスという事になると、ババン!と思い浮かぶのはやはり映画版の石坂浩二さん、或いはテレビ版での古谷一行さんの、あの金田一ファッションではないでしょうか。実際に金田一耕助のコスプレをして集まるファンミーティングのような物も各地で行われているようで、少しネットを叩くとその様子が写真とかで出てきます。見ると、皆さん「この令和の時代に」なかなか見事に再現されているなぁ~、と感心させられます。

「この令和の時代に」

と前置きしたのには理由があります。
実は、先の石坂浩二さん、古谷一行さんの金田一耕助のコスプレって、汚らしいオフカラーの和装というイメージがあり、簡単に実現しそうなのですが、実際には簡単ではなかったりします。
着流しと袴、襦袢などは簡単に調達できます。ネットを叩けば出てきますし、何なら呉服屋に行けば用意してくれもします。今も現役で作られている着物だからですね。

問題はこの他の金田一耕助グッズです。

1)帽子
これにまず躓く方が多いでしょうね。ファンミーティングの写真を見ても、チューリップハットやボウラーハット等で代用されている方を多く見ます。金田一耕助の帽子は「お釜帽」と呼ばれる物で、令和の昨今では帽体としては既に絶滅しているからです。お釜帽はその名の通り、ご飯のお釜のような形をした帽子で、フェルト素材を、2つの重ねたお釜の間で圧縮したような帽体になっており、帽子には継ぎ目が一切なく、天辺も中折れになっていません。また帽子の縁もボウラーハットのように反り返っておらず、かといってストレートでもなく縁に行くに従って布が余っている感じになっているのでヨレヨレになります。映画写真を見るとなってますよね。色は「ねずみ色(汚いグレー)」なのですが、ここはもう無理です。
これ、手に入りません。
運が良ければ「金田一耕助の復刻帽子」と銘打って、それっぽいのを1万円位で限定的に販売されていることがあります。運が良ければ手に入るかも知れませんね。
 
2)外套
いわゆるコートですね。金田一耕助は冬には例の着流しの上にコートを着ます。これもトンビコートやインバネスコート、稀にドラキュラが着るようなマントをはためかせている方も見かけられますが、私の見た感じでは、そのどれも纏ってはいないように思えます。答えはU字外套と呼ばれる物ではないかと思います。極端な話をすると円形の布の真ん中に首穴を開けて前を切り離した形の外套で、バサッと羽織って首辺りでボタン留めするだけの簡素な物です。清水次郎長親分が羽織っていたものの長尺なものかなと思います。つまり洋物ではなく和物の外套です。この羽織に替えるだけで、上半身がなんとなくシャーロックホームズになっていた物が、一気に金田一耕助感が増し増しになるはずです。
これは、何とか手に入ります。ネットを叩いて探してみましょう。飽くまで和装ですから生地も織りもトンビやマントとは違っていてヨレヨレ感もあって雰囲気が上がるはずです。

地味な色でこの二つを入手することが出来れば、その恰好をするだけで、何も言わなくても「金田一耕助?」と言ってきてくれるほど雰囲気が近付きます。これは保障します。

しかし、もう一歩近寄りましょう。
  
3)足袋と雪駄
石坂浩二さん、古谷一行さんの金田一耕助は和装です。和装は足下まで見えると言うか見られる服装ですので、ここが普通の靴下とクロックスでは雰囲気だだ下がりです。しかし、この二つは簡単に手に入りますね。基本何でも良いと思います。手に入れたら履き倒してヨレヨレの汚い感じにすれば完璧です。
 
4)カバン
最後はカバンです。いわゆる寅さんカバンと言われるような、革製のドクターバッグのようなカバンなのですが、これも手に入れやすいですね。金田一耕助に近付きたければ中古の使い古した物を入手すると良いでしょう。ただし、カバンは片手が塞がるアイテムで、使い勝手の問題も出てきますので、個人的には無理に手に入れる必要は無いかと思いますね。
 
一番の入手困難アイテムは、やはりお釜帽でしょうね。
ちなみにもし入手することが出来たら、ヨレヨレになるほど感じが出るのですが、意図的にする必要はありません。実は金田一耕助が帽子を被っているという場面は、物語の最初と最後くらいな物だったりしますよね。それ以外はどうしているかというと、大抵は手で丸めてニギニギしながら話をしているか、二つ折りか四つ折りに畳んで胸元に入れているかという事が多いです。つまり同じ事をやっておればヨレヨレになっていきます。つまり金田一耕助グッズというのは、大事にするよりも使い込んだ方が金田一耕助感が増してゆくという事です。
 
ところで私は、なぜそこまで知っているかと言いますと、別に金田一耕助を意識したわけではないのですが、実はお釜帽も和装外套も持っており、冬になると実際に来て外出しているからです。かといって着流しに袴は着ておりません。あんなの現代では実用的ではないでしょ。私は人間が古いので、男性って普段着たり身に付ける物に実用性の無いものを加えると、相手に与える印象が軽率になってしまうという感覚があります。現代の和装で一番実用性の高い着物はズバリ「作務衣」です。今は専ら寺院の方だったり伝統工芸品を作る職人さんの作業着というイメージですが、古くは幕末の軍服にもなったほどの実用性のある和装です。毎日ではありませんが、私はもう20年以上作務衣を着ておりまして、一番最初に買った本藍染の作務衣は今も愛用しております。これが年季が入って程よくヨレヨレになってるんですよね。なので、意図は無くても冬になると外套を羽織ってお釜帽を被るだけで金田一耕助になってしまうのです。金田一耕助を目指しているわけではありませんので、足下は普通の靴下に黒の作業用クロックスを履いています。これで京都に撮影に行きますと、後ろからシャッター音がよく聞こえます。まぁ、京都の町に馴染みますからね。撮影の邪魔にもならないんじゃないかと・・・笑
 
ところで、お釜帽や外套はどこで手に入れたかって?
 
それは企業秘密ってことで・・・。
ホント、マジで売ってないよね。
いかがでしょうか。