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コンポジット撮影→比較明合成という流れについて。

デジタルカメラでの夜景撮影とか花火撮影など、長秒露光を必要とする、あるいは長秒露光した方が綺麗な写真になる可能性がある撮影でのその方法として短秒撮影した写真を複数枚撮影して、それをPhotoshopやSiriuscompといったパソコンソフトで重ねて、比較明合成を行い、1枚の写真に仕上げるという方法がある。これを俗にコンポジット撮影とかインターバル撮影とか呼ばれており、最近のデジタル一眼ではこの機能が搭載されている機種も少なくない。
コンポジットやインターバル撮影とは、厳密にはその撮影方法を指すのだが、その方法で例えば花火を撮影すると、長秒撮影ではセンサーの捉えられる輝度がオーバー・・・つまり白飛びさせる事無く花火の光を複数枚のコマで撮影し、比較明合成することで綺麗で輝度の高い派手な花火を再現する事が可能になる。ところが最近ではこのコンポジット撮影は「邪道」とする向きが強くなってきており、花火も夜景も「一発撮り」と言われる無合成で撮影された写真を自慢する風潮がくすぶり始めた。私的にはデジタルカメラでの表現方法、撮影方法の幅を狭める風潮だと思えたので、改めてコンポジット撮影という手法の意味をここに記しておきたいと思い立った訳です。とりあえず、始めに言っておきますけど「一発撮り」って、それほど偉そうに自慢する事でもないと思いますよ。正直な話、1枚の処理で終わる分、コンポジット撮影よりも簡単だし・・・。
 
フィルム時代には無かったコンポジット撮影が、なぜデジタルカメラになった昨今になって言われるようになったのか・・・。これを語らずしてコンポジット撮影を理解する事はできないので記しておきますと、要するにデジタルカメラはイメージセンサーという電気仕掛けのフィルムに、光を当てて撮像をイメージ化し、演算によって色を付けて1枚の画像を起こしているという仕組みで、フィルムで言うと昔のコダクロームのような外式フィルム(後から色付けをするフィルム)のような処理をカメラ内部で次々に行っているわけだ。
レンズを通した光をフィルムに当てて撮像をする場合は、電気を使わないので、フィルムが露光オーバーにならない限りは事実上幾らでもシャッターを開けて長時間露光を行う事が可能だ。実際に夜景からより多くの光跡を得る為に、低感度フィルムで減光フィルターを用いて撮影すると言った場合、30~60分、もっと言えば90分の露光を行う事だって、フィルム時代は別に珍しい事では無かった。しかしこれと同じ事をデジタルカメラで行ったらどうなるだろうか。さてさて、興味のある方は百聞は一見にしかずと言いますから、実際にそのデジタルカメラで夜景を相手にやってみるとよい。
 
・・・・・・・・・。
 
する気しませんよね。
デジタルカメラで60分とかの露光なんて。
カメラ壊れちゃうんじゃないかとかも考えてしまったりして。笑
実際にそれだけの露光をデジタル一眼でやってみると、センサーが帯電してしまって熱を帯び、いわゆる長秒露光ノイズ(カラーノイズ)が発生します。また、撮像のあちこちに赤潮のようなムラが出る物もあります。その為に撮影後すぐにレンズカバーをして1枚撮影し、合成時にそのノイズを差し引くという手法を特に星景写真の処理で行うようですね。
要するに、カメラマンの本能が長時間露光をやりたくないと思わせる以前に、電気仕掛けで撮影を行うデジタルカメラとは相性が悪い訳です。その本能、信じて良かったですね。笑
 
しかし・・・、
 
長時間露光ができないと言う事になると、フィルムには撮れてデジカメには撮れないと言う写真ができてしまいます。例えば、その昔香港旅行に行くとバスガイドに必ずと言ってよいほど買わされてしまう香港の夜景のスライド写真とか、道路上に長く強く光跡が残るような写真などです。これらを撮るにはやはり数十分単位の長時間露光が必要になってきます。
そこでデジタルカメラ向けとして考え出されたのが、数秒単位の露光写真を連続で撮りつないで、それらをパソコンソフトで合成し、長時間露光を施したような1枚の写真に仕上げるというコンポジット撮影という撮影方法なのです。つまり、コンポジット撮影を否定するという事は、それに比肩する撮影方法がありませんので、そのカメラでは絶対に撮れない景色ができてしまうと言う事です。花火の撮影についても同じ事で、時間が極端に短いだけで、理屈はセンサーの受光容量を超えない光量に制限する撮影方法であり、何ら否定される撮影方法ではありません。むしろ、コンポジット撮影の方がカメラを絶対的に固定する必要があり、撮影条件を揃えるために全ての設定をマニュアルにしなければならないなど、一発撮り=単発撮りよりもむしろ高度な撮影技術と器具、そしてソフトウェア技術が必要になります。こう言うと「一発撮りにこだわっている」という特に花火カメラマンに「別にコンポジットを否定しているわけではない」などと事程左様な理屈を付けて怒られそうですが、残念ながらコンポジットの方が準備も多く、高い技術が必要なのは否定できないところでしょう。ましてや花火となるとBULBモードでの目押し撮影が定番ですので、カメラが一定間隔で撮影してゆくコンポジットだと名シーンも撮り逃す可能性だって出てくるわけです。私もメインカメラでは目押し撮影、サブカメラでコンポジットをしますが、しかし手間がかかるのは圧倒的にコンポジットの方です。
 
要はコンポジット撮影とは、長時間露光とは相性が悪いデジタルカメラ向けの撮影法として考え出された物であるという知識(認識ではない)があるかどうかです。コンポジットを否定するカメラマンは、単に後で合成写真を作る為の伏線技術だという認識しかないのではないでしょうか。
合成写真というのは・・・
そこにあるはずのない物がある。
その時間には見られない物がある。
と言った写るはずのない物が、複数の写真の一部から事後の加工によって画像内に移植されている写真の事を言うのです。一番分かり易い例は心霊写真ですね。デジカメでPhotoshop等の加工ソフトを知っている人なら簡単に作れる事は察しが付くでしょう。UFO写真もそうです。静止画で簡単にできるようになってしまったので、オカルトなスチル写真では説得力が無くなってしまったため、その業界?の人々は、更に高度な技術と機材と手間のかかる動画へとシフトしているのです。
花火にしても、東京タワーの横で上がっている物は言うまでも無いとして、例えば最初に上がった花火と最後に上がった花火をあたかも同時に上がったかのように加工するのは私は合成だと思っています。しかし、ほんの十数秒のうちに上がったワンシーケンスの花火をコンポジット撮影し合成して劇的な写真になったなら、それは合成では無く立派な写真だと思っています。なぜなら同条件で撮影し撮像全部を単純に比較明合成しているからです。それに同じ物をそこにいた万人の方も見ていた光景でもあります。ならば花火大会の最初から最後までをコンポジットして、全部を合成した物も写真じゃないかと屁理屈を捏ねてくる方に言っておきます。それがあなたにとって誇れる写真になるというのなら、それはそれで立派な写真です。どうぞ私なんぞに構わず最初から最後までコンポジットして、素晴らしい花火写真にしてください。
でも、これも言っておきます。
(香川照之の大和田常務の口調で)「やれるもんなら、あ、やってみな。ってか。笑」
 
憎まれ口はこの辺にしといて、今回は、最近デジカメを始めて、たまたま一発撮りにこだわるカメラマンと花火撮影でツルんでしまったが為に、コンポジット撮影に誤った解釈をしてしまっている初心者カメラマンが、ボチボチ出回りだしてきているような気がしましたので、コンポジット撮影の技法について、少々ウンチクを述べさせて頂きました。
デジタルカメラは、元々は撮影後にパソコン上で直接加工ができる事を利点にして生まれた撮影機材であります。スキャナーでは無くカメラでデジタル画像として直接パソコンに取り込めた時は、それはそれは画期的でした。Windows時代以前からパソコンとカメラを知っている人は、その画期的な瞬間を皆知っています。
これによりフィルム機では為し得なかった劇的な画像処理も簡単にできるようになりました。その発展型が今のデジタルカメラの世界として確立されたのです。タダそれだけの事。
一発撮りはフィルム時代では当たり前にやっていた事です。
デジタルカメラになって、その必要が無くなったわけです。
それをまたデジタルカメラで一発撮りでなければならないというのは、スタン・ハンセンがアメフトのハイタックル(現在は禁止技)をヒントにウエスタンラリアットを編み出したのに、後年になってプロレス技で「ハイタックル」を編み出した!と、騒いでいるような話で、「せっかく新しい技法を編み出したのに、なんでお前はまた元に戻すんじゃ」っていう、聞いている方が恥ずかしくなる程に本末転倒の理屈なのです。撮影方法にコダワリを持つのは良い事ですが、それを周囲の人間にもひけらかすのは、私のようにカメラ技術の経緯を知っている者が聞くと笑い話にしかなりません。
だって一発撮りの方が簡単だし。できればそうしたいよ。できないからコンポジットなんだよって・・・。
 
一発撮りです!なんてSNSで自慢げに書かない方がいいよ。サラッと撮影機材と条件を書いているだけの方がスマートです。
知るは一時の恥と言います。知らなかった人は、ここでこっそり知っておきましょう。あなたにとって豊かなカメラライフとなりますように・・・。