昔々に週刊少年ジャンプの特別読み切りで初めて読んだデス・ノート。その後、週刊少年ジャンプで連載化され、アニメ化されて、藤原竜也と松山ケンイチの共演で映画化され、この度テレビドラマ化されて週一で放映されている。
超有名な漫画作品ではあるが、これも時代の流れか、ドラマ版は私が知っている役者が殆どいないという・・・。(^^;
今更書くまでもないが、一応記しておくと、死神が暇つぶしで人間界に落としてみた自分のノートを主人公の八神月(やがみ・らいと)という大学生の青年が偶然に拾う。そのノートこそがデスノートと呼ばれる物で、以下のようなルールがある。
・顔を知った上で、名前を書き込めば、その人間は心臓麻痺で死ぬ。(顔の認識が必要なので、無知の同姓同名には影響しない)
・死因を書き込めば、そちらが優先されて死ぬ。
・一度書き込んだら消せない。
という感じ。
これを使ってその主人公は、目の前の悪人をデスノートで殺すのを皮切りに、世界中の有名な犯罪者を次々にノートに書き込んで殺し、デスノートを使って世界を変えようと目論む。いつしか民衆の間では「キラ」と呼ばれるようになり、崇拝する者までも現れ、一種のカリスマ的な存在になる。
一方で、世界中の警察が手をこまねいているのを尻目に、次々に心臓麻痺で死亡する重大犯罪者に不審を抱いた一人の探偵が既にキラの捜査に乗り出しており、冷徹で聡明な知能でトラップを仕掛け見事にキラが日本の関東圏にいる事を突き止める、その探偵がL(エル)という人物である。かくして、東京を舞台にデスノートを跨いで八神月と探偵Lの熾烈な頭脳戦の駆け引きが繰り広げられる・・・という感じの物語。続きが気になったら映画なり、ドラマなりで是非!!
って、なんで私が番宣してるんだよ・・・。(^^;
ドラマ版は原作を少し改編しているようで、オリジナルストーリーも組み込まれているようだ。レイ・ペンバーが殺される過程も少し違っていたし・・・。
ちなみにジャンプで初めてデスノートが登場した読み切り版では、主人公は学校のクラスのいじめっ子をはじめ、短絡的に周囲の人間の殆どをデスノートで殺してしまう・・・が、思い直してデスノートに書いた名前を消して、生き返らせるという物であった。そう、本編とは違って当初は24時間以内だったかな、名前を消せば生き返らせる事が出来たのだ。そのルールを本編ではなくした・・・という点が、物語をよりリアルでスリリングな物にしていると思われる。
また、世界的に有名な探偵と日本の警察がキラを殺人犯として逮捕しようと躍起になっている姿も印象的だ。
さて、
多くの方がこのデスノートにハマっていると思われるが、実際にこの主人公のような青年がデスノートを使って人を殺していたとして、その者を法廷で殺人の罪に問う事が出来るのかどうか・・・?
この疑問は、結構皆さん持っていると思うのだが、ネットを見て回ってみますと、意外に質問が少なく、また明確に答えられている回答がない・・・。私は別に弁護士では無いけど、答えは明確に出来る。
答えは、ノー。
Lと警察が八神月を逮捕、立件して書類送検し、デスノートを証拠にして検察が起訴したとしても、法廷は維持できない事はやる前から明白だ。
まず、デスノートの真偽を確かめる事が出来ない。=証拠能力がない。デスノートに証拠能力を持たせる為に、検察側がデスノートを使って殺人を犯さなければならないと言うのは本末転倒だろう。笑
と言う事は、デスノートは幾ら八神月のお父ちゃん(キラ担当の警察官)が「これが凶器なのだ!」と喚いてみた所で、デスノートと一連の犯罪者の死亡との因果関係を結びつける事が出来ないのだ。
仮に、
「私が証明してやる!!」
と言って、八神月のお父ちゃん辺りが、法廷でデスノートに自分の名前を書き込んでその場で死んで見せた所で、「ノートに名前を書き込む」という行為と「心臓麻痺で死亡する」という事実が科学的に結びつけられない。また、デスノートを科捜研に持ち込んで調べた所で、ただの風変わりなノートとしてしか結果は得られないだろう。ただ、デスノートを触った人間は死神リュークの姿が見えて話を聞く事が出来るようにはなるが、死神リュークを法廷に引っ張り出して証言させるなどは現実の法廷としてはあり得ないし、それこそ映画「すてきな金縛り」を地で行くような話だ。(笑)
つまり、デスノートは法廷では「呪いのわら人形」や「バズビーの椅子」のようなオカルト物の扱いをされるのが関の山なのである。少なくとも判事も裁判員もそういう判断をせざるを得ない。
いや・・・、
法廷に行く前に、検察官が証拠不十分で不起訴処分にする可能性が濃厚だ。私が検察官ならそうする。そうするしかない。
結局八神月は最長23日間の拘留と勾留を経て、嫌疑不十分で自由の身になり、デスノートも逮捕時の所持品と言う事で八神月に返される事になる。当然リュークの姿が見える者が続出するが、騒げば精神病院に放り込まれる事請け合いだ。これがキラ逮捕後の流れかな。
しかし、そうなるとLが黙ってはいないだろうけど、法治国家でさえも罪に問えない人間を、法治国家で飯を食っているLが勝手に不起訴処分になった八神月を拘束する事はできない。それこそ世界中のキラ信者がLを糾弾しまくるだろう。
要するに、「丑の刻参り」に犯罪性を認めるかどうか・・・?
という話と同じ次元という事だ。
原作では、キラはLに勝つが、Lの遺志を継いだニアに負けて、八神月の負けと判断したリュークにデスノートに名前を書かれて死ぬ事になるが、よくよく考えると、八神月には負けは無かった事になるのだ。一時のプライドとか色々あるかも知れないが、「殺人罪」に問えない時点で、総じて八神月の勝ち戦という事になる。
しかし、それでは世間に顔向けが出来る作品にはならないので、原作では「探偵か警察にキラだと断定されるまでの勝負」という事にしたのであろう。
ところで・・・。
もし、八神月が不起訴処分で再びデスノートを持って自宅に戻ったら・・・。今度は独裁政治を行う国家や、時の権力者、世界中の大金持ち等が挙ってキラの獲得・・・というかデスノートの獲得に動くだろう。KGBやCIA、ありとあらゆる秘密の国家機関が八神月の周囲を取り囲むはずだ。それはそれで八神月にとっては暮らしにくい世界になりますね。八神月はとっとと信者を集めて頑強なキラ御殿を建てて籠もらないといけませんな。で、あとはリュークとリンゴを食べながら一人、また一人と・・・。(^^;