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スタッドレスタイヤとタイヤチェーンの関係

明日だか明後日だかに十年に一度と言うほどの強烈な寒波が来る・・・と、数日前からテレビの向こうが騒いでおります。十年に一度と言われても、ここ十年以内に、そんなビックリドッキリな寒波があったのかどうか大阪在住の私には記憶に無い。強いて挙げれば2015年の正月早々に積雪20cmの雪を降らせた寒波くらいだ。元々大阪や京都市周辺は温暖な所で、大寒波が来ると行っても大抵は寒いだけで、なかなか雪が積もるという所まではいかないんですよね。私の住む高槻市出身の歌手・槇原敬之さんの歌「北風」の歌詞も、よく聴くと深い降雪地帯の歌では無い事が分かります。要は積もると良いね・・・程度で、積もってもその日の昼過ぎには大方雪は消えています。そんな季節柄の土地なので、冬になったからと言ってせっせとスタッドレスタイヤに履き替える人は私も含めてほぼいません。ちなみに私は過去4年間に渡ってオールシーズンタイヤを2セット履き潰しましたが、あまりの需要の無さと、あまりの寿命の短さに辟易して、今はノーマルタイヤを履いています。
さて、
冬になるとスタッドレスタイヤ(冬用タイヤ)に履き替えるのは当然と言った風潮が世間様には流れているようですが、以前は無かったスタッドレスタイヤ、いつの間にこんな事をドヤ顔で言う輩が湧いてきたんでしょうかね。
知ってか知らいでか、その根拠は「タイヤの滑り止め規制」という各都道府県で決められている規制にあるようです。この「タイヤの滑り止め規制」が「冬になったら滑らないタイヤに換える」になって「冬になったらスタッドレスタイヤを履け」と言う論調に発展してしまったようです。しかし「タイヤの滑り止め規制」と言うのは確かに存在しますが「冬季はスタッドレスタイヤを履け」という規制は日本中どこの地域にも実は存在しません。法や条例など規則的な事を申しますと以下のようになります。

1)冬用タイヤ規制
・スタッドレスタイヤを履いている。
・ノーマルタイヤだけどタイヤチェーンを携行して直ちに装着できる。
上記のいづれかの条件を満たしている場合は大丈夫です。

2)タイヤチェーン規制
・タイヤチェーンを装着しないとノーマルもスタッドレスも通行不可。

という事になっています。
つまり、キーパーツとなるのは「タイヤチェーン」を携行していて、直ちに装着ができるか否か…という事なのです。スタッドレスタイヤだから無敵というのは間違えていますので、特にスタッドレス信仰の強い方は、知るは一時の恥という事でここで知っておきましょう。特に申し上げておきたいのは「ノーマルタイヤだけどタイヤチェーンを携行しており、直ちに装着できる」クルマはOKと言う点です。

では、
法や規則はとりあえず置いといて、次に目的到達力という点から考察したらどうなるか考えてみましょう。私の経験上から申しますと以下の順位になります。

1位)スタッドレスタイヤ装着+タイヤチェーン携行
2位)ノーマルタイヤ装着+タイヤチェーン携行
3位)スタッドレスタイヤ装着のみ
4位)ノーマルタイヤ装着のみ

スタッドレス信仰の強い方は2位に納得がいかないかも知れませんが、残念ながらこれが現実です。スタッドレスタイヤも近年では性能の向上が目覚ましい物がありますが、やはりタイヤチェーンを装着した車にはアイスバーンの走破性や凍結道路での登坂能力などでは及ばないのです。これは実際にノーマルタイヤ+タイヤチェーンの私が、夜中の山道で立ち往生していたスタッドレスのみのクルマを幾度となく救助している事からも実感がありますし、運送業を営んでおられる方も口を揃えて「タイヤチェーンの方が確実」と申されております。ただし1位のスタッドレスにタイヤチェーンの装着は一番安全性も高くなります。が、スタッドレスは柔らかいので、それに対応したタイヤチェーンを装着する必要があります。非対応の物だと著しくタイヤの寿命を縮めてしまいますので注意が必要です。

さて、
スタッドレスタイヤは結局何なのか?
という疑問を持ってしまう方もいると思いますので触れておきましょう。これはスタッドレスタイヤがなぜ生まれたかを考えればすぐに頷けると思います。
スタッドレスタイヤが無かった時代は、日本中のクルマは季節を問わずにノーマルタイヤを履いていたわけです。で、チェーン規制が出た所でタイヤチェーンを装着して対応していたんです。名神高速では関ヶ原辺りから浜名湖の手前辺りまでがよく規制されており、冬の風物詩のようでもありました。つまりノーマルタイヤを履き、規制がかかった時点でタイヤチェーンを装着するというのは、実は今も当たり前の事なのです。しかし、北海道や本州の豪雪地帯では常にチェーンがないと走れないという状況です。しかしチェーンは走破性は高くても走行速度が30~40km/hと制限されてしまいます。これを解決するために使用されていたのが、タイヤに鋲が打たれたスパイクタイヤと言う物でした。ラリー等レース畑ではスノータイヤとか言ったりしますね。鋲が打ってありますので、ガリガリと雪を掻いて走る事が可能で、しかも60km/h前後で安定して走る事ができました。私の田舎は青森の下北方面ですので、当時はタクシーなどが当たり前のようにスパイクタイヤを履いていたのを覚えています。しかし、スパイクタイヤはある程度の積雪があれば問題ないのですが、春先など雪が薄くなってくるとアスファルトをガリガリと掻いて走る機会が増えてくるんですね。これが道路上に完全に雪のない季節になってくると、大量の粉塵となって舞い上がり、とんでもない公害となってしまう訳です。という訳で国はスパイクタイヤを一部を除いてほとんどの降雪地帯で禁止にしました。
そうなるとタイヤ業界も知恵を出すもので、すぐさま降雪地域のニーズに応える為に、タイヤのコンパウンド等を調整し、鋲のない雪道対応のタイヤを挙って開発、発売しました。これがスタッドレスタイヤという訳です。当時はおっかなびっくりで、タイヤメーカーも発売したものの試行錯誤を続けるという事を繰り返し、今に至っています。スタッドレスタイヤは、単に粉塵を出してしまうスパイクタイヤに代わる物として生み出された物なのです。日本語に訳すと「鋲(スタッド)の無いタイヤ」となりますね。
しかしながら、スタッドレスタイヤが発売されてもしばらくは業者の間では浸透しませんでした。どちらかと言うと新開発された簡単装着の非金属チェーンの方が浸透した記憶があります。これは、ノーマルタイヤよりも柔らかい素材のスタッドレスタイヤにチェーンを装着すると、タイヤを著しく痛めてしまい、経済的に不利だったからです。最近になって要約スタッドレスタイヤ対応のタイヤチェーンも多数見るようになってきましたが、当時はスタッドレスにはチェーンが装着できないという事もあって、結局目的地への到達能力ではノーマルタイヤにチェーンの方が上だったという訳です。これは当時の国土省(現・国土交通省)の現場担当者もそう言ってスタッドレスタイヤの注意点を喚起していましたので紛れもない事実です。
つまり、
スタッドレスタイヤの歴史に「タイヤチェーンが不要になる」等と言う文言などは存在しないのです。スタッドレスを履いているので立ち往生はしない、事故なんて絶対に無いなどと嘯いている輩は、本当の過酷な環境を走った事のないド素人の戯言です。私ならそんな輩の運転するクルマになど同乗したくないです。スタッドレスを履いていても、凍結路の下り道で信号待ちすると、突然ズルズルと交差点に向かって滑りだす恐怖も知らない奴が偉そうに冬用タイヤだスタッドレスだ等と一席吹いているのを見ると、本当に辟易します。ノーマルタイヤでも何でも、とにかくタイヤチェーンを携行し、直ちに装着できる事が大切なのです。
ちなみに私は昔からレスキュー用のタイヤチェーンを携行しており、これは今では当たり前ですが、スタックしてからでも装着が可能な非金属チェーンです。これを私は実際の現場で左右5分で装着できます。動画サイトを見ると、練習では簡単だったが、現場ではチェーンが届かず装着に苦労している方が多く見受けられますね。現場での装着でチェーンの長さが足りなくなるのは、寒いから縮んでいるのではなくて、タイヤがスタックした時の摩擦熱で雪に沈み込んでいるからです。つまり、タイヤの接地面周辺の雪を木の枝とか細い物を使ってどかしてやれば練習同様に簡単に装着できます。これは私の過去記事に詳細がありますので検索してみてください。ちなみにジャッキアップでのチェーン装着はクルマが浮いた瞬間、不意にクルマが動き出したり、寒さと焦りでジャッキの掛け具合が悪かったりで、思わぬ事故に発展する危険がありますので絶対に止めましょう。タイヤとフェンダーの間に腕が挟まれたら即遭難状態ですよ。
 
今回は、ネットニュースを見ていて、余りにスタッドレス信仰に毒された輩が多い事に辟易して、日記に記してみた次第であります。