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ネガフィルムのデジタル化

前回のAPS-Cカメラに対する私の考えの延長と言う訳でもないが、フルサイズはフィルムで…という考えが結構以前からあった。理由はフィルムが持つ特有の色味というか空気感が、やはり魅力的だからだ。画像だけを見てAPS-Cで撮ったのかフルサイズで撮ったのかなんて、誰が見ても判別が付かないデジタルカメラの世界で、APS-Cの多くの利点を捨ててまでフルサイズカメラに移行するメリットなど一般ユーザーにはない訳でして、まぁ強いて言えば所有欲と撮影現場でAPS-Cのカメラマンに自慢するという恥ずかしい行為が出来る事位だろうか。北海道での撮影の折、キヤノン7Dからニコンの当時発売されて間もないD800を手にし、やっぱりフルサイズで無いとダメだと大絶賛(=大自慢)をしている現場で出逢ったおっちゃんの話は、何度欠伸を我慢した事か…。こういう面倒臭いの多いんだよなぁ…フルサイズのデジカメぶら下げてる奴って…。ネット上にも良く散見されるし…。(^^;
まぁ、そういう事ですわ。

閑話休題。
35mmフィルムのカメラで撮影したら、当然の事ながらネガやプリントが手元に残ります。そのまま保管してたまに引っ張り出して楽しんでも良いがここは一発デジタル化という訳だ。フィルムをデジタル化するには幾つかの方法がある事は、以前この日記で書き記したとおり。代表的な例を下記に例を示しながら順番に見てみよう。

①カラープリントからスキャンする方法
ファイル 18-1.jpg
600dpi位でスキャンした後に白っぱくれを消す為にレタッチを少々施している。元々のDPE店での出来上がりに左右されるという部分はあるが、とにかく普通のスキャナがあれば良いだけで、圧倒的に手軽な方法だ。ただ、必ずレタッチをしないとスキャンしました感がアリアリになってしまうが、以外にイケる方法では無いかと思う。

②フィルムスキャナでスキャンする方法(EPSON PM-920の付属機能)
ファイル 18-2.jpg
2400dpiでスキャンして。レタッチはスキャンソフトによる自動色補正や退色補正などに頼ったのみだ。これも手軽にデジタル化するには良い方法だと思う。難を言えばホコリに気を付ける事と、少し時間が掛かる事かな。解像度を落としてスキャンすればもっと早く作業が出来るとは思うが、あまり荒くしてしまうとフィルムらしさまでどこかへ行ってしまう気がするので2400dpi位ではスキャンしたい所だ。プリンター一体のフラットヘッドを使ったが、10000円位までのフィルムスキャナであっても、デキは対して変わらないと思う。これでOKならOKという出来上がりだと思います。

③デュプリケーターを使ってネガを再度デジカメで撮影する方法。
ファイル 18-3.jpg
所謂デュープと言われる方法。走査線でスキャンするのとは根本的に違う方法なので、出来上がりの状態も変わってくる。デジカメのモニターでピントを追い込んで撮影するので、とにかく綺麗に仕上がる。恐らく10万円クラスのフィルムスキャナに匹敵していると思う。これはニコンのES-1という3500円程で売っているデュプリケーターを使いました。フルサイズのデジカメとマイクロニッコールの60mmの使用を想定しているようで、実際にそのセットで使うとAFを使って効率よくデュープが出来る。ご自慢のフルサイズデジカメが生きてくる場面だ。私の場合はAPS-C+35-70mmマクロなので中間リングを使って距離を稼いでMFでデュープしました。恐らくこの方法が安価で一番綺麗な仕上がりになると思われる方法だと思います。フィルムスキャナを検討している方は、この方法も検討してみると良いと思います。

さて、
どんなもんでしょうか。フィルムの色味というか空気感は…。
ちなみにフルサイズのデジタル一眼で撮影した画像はこんな感じです。
ファイル 18-4.jpg
解像感や鮮烈さは圧倒的ですな。まさに現代カメラの写真って感じですよ。しかし、言い換えればデジタル一眼で撮影した方は、みんなこの写真を持っていると言う事でもあります。そこでオリジナリティを上げる加工をする訳ですが、もちろんデジタル処理でフィルムっぽい雰囲気を醸し出す事もできます。出来るんですが、本物に勝る偽物は無しと言うだけあって、やっぱりフィルムの持つ空気感には適わないんですよね。レトロというか野暮ったいというか昭和というか…。
35mm判のフィルムの画像は、今は風景画にはあまり向かないのかも知れない、でもスナップショットには向いていると思うのだ。35mm一眼レフに一番に合うレンズは50mmの標準レンズだ。ズームなら35-70mmと言った所だろう。私もF5には50mm単を、F801には35-70mmを付けている。これがフィルムで一番楽しい撮影が出来るセットなのだと思う。
ネガフィルムの色味を調べていて、行き着いたカメラマンが一人いました。梅佳代という若手の人気女性カメラマンだそうだ。結構有名らしいが知らなかった…(^^;
彼女の愛機はキヤノンのEOS5というフィルムカメラで50mm単を付け、Pモード以外はほぼ使わないと言う。スナップショット専門のカメラマンのようで、寝る時以外はいつもカメラを首から提げているという方らしい。そんな彼女にEOS KISS等のデジカメを持たせて撮り歩きをさせるなど、色々とやった雑誌社もあったようだが、結局梅佳代氏の感想は、(デジカメは)思ったよりも綺麗に写る。でもフィルムの方がやっぱり綺麗。という物だった。今の人からすれば「??」な回答に聞こえるだろう。しかし梅佳代氏は本能で自分の写真はフィルムカメラだから出来上がるのだと知っていたのだと思う。
彼女の写真には、よく見るとクォーツデートが入っている。ピントなんて二の次で、今日日のカメラマンが求めるような、小綺麗なデジカメ画像とはほど遠く、とにかく写っている物がそれであればヨシとする作風だ。このナチュラルさがウケて世界からも絶賛されているという事実がある。現実世界やネット世界でしばしば繰り広げられる重箱の隅をつつくような熱いカメラ論争も、彼女にしてみればフッと笑ってシャッターを押したくなるような、面白い場面なのかも知れない。
彼女の作風のナチュラルさの内訳には、フィルムカメラでの撮影という部分がかなり大きいと思われる。仮に彼女が最新のデジカメでカメラ理論に囚われてパシッとしたスナップ写真ばかりを撮っていたとしたら、今程の話題を呼ぶカメラマンになるには、まだまだ時間が掛かったのではないかと思われる。それは彼女自身も恐らく分かっているのだ。だからEOS5が壊れたら中古屋でEOS5を買い直し、街中の相性の合う45分プリントのDPEショップで現像に出し、昔のやり方で切り込み続けているのだと思う。結果、プリントの方が綺麗だと彼女の眼には映るのである。
しかし、そう遠くない未来にフィルム機が絶滅する日が来るのだろう。その時彼女がまだ写真家をしていたとしたら、どのような写真家になっているのか、とても興味がある。それまではEOS5をトレードマークに写真をとり続けて欲しいものである。

ちなみに最後になりましたが、4枚目のデジカメでの撮影画像は、フルサイズカメラではなくAPS-Cカメラで撮影したものです。ここにお詫びと訂正を入れておきます(笑)。