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女子のプロ野球リーグについて思うこと。

実は私、かつてあった女子プロ野球とは実は些少の縁があった身でありまして、最初2チームから始まったリーグも、最盛期には4チームにまで増えましたが、つい最近になって数年前に消滅していた事を知ってちょっと物寂しくなりました。
女子プロ野球機構が発足したのは実は大阪府にある高槻市で、公式戦ではわかさ球場などが使われていましたが、練習の本拠地としては高槻市にある大谷山グラウンド(現在は閉鎖)が使われていました。女子プロ野球ではチームに関係なく全員が大谷山グラウンドで練習をしていましたので、練習日は40名余りの全選手、審判員、コーチ陣が一堂に練習・指導に励む姿が見られました。ちなみに発足当初は「京都アストドリームス」「兵庫スイングスマイリーズ」の2チームでした。ちなみに大谷山グラウンドはそれ以前から高槻市のリトルシニアチームのグラウンドとして使用されており、女子プロ野球はリトルシニアが使わない平日昼間を主に使用していたようです。
私もカメラマンとしてグラウンドに足を運ばせて頂いたこともあって、実際にグラウンド内で撮影もさせて頂きましたし、元GのK投球にも会わせて頂きました。またリトルリーグ時代からよく知っていた女の子も入団を果たす(現・阪神の女子チーム在籍)など、これらの経験は今も楽しい思い出として心に残っています。(私の写真は著作権の問題から掲載は一切しておりません)

さて、そんな当時の思い出話はさておき、最近知ったのですがプロとしての硬式野球リーグはないものの、アマチュアレベルではチームや対抗戦があるようで、今も女子硬式野球が何とか実施されているというのは喜ばしい事なのですが、やはり女子ですね「美しすぎる野球選手」と言う呼ばれ方で加藤優という選手が話題になっていたようで、一旦野球界からは引退したもののアマチュア選手として復帰するなどしてタレント活動と並行して女子プロ野球の普及・活性化に尽力されているようです。が、その加藤選手もやはり「美しすぎる・・・」と言った女子特有の肩書きが付いて呼ばれてしまうことに違和感のような残念な気持ちになるような事があると仰っておられました。確かに、スポーツ界に限らずかつてのクリミアの検事総長を務めていた女性も「美しすぎる・・・」という呼ばれ方をされて話題になっていましたね。でも、加藤選手にしてみれば、もっと女子選手のレベルを上げて、男性と同じくらい野球が出来るんだという事を示さないとプロリーグは成り立たないとも仰っておられます。実はこの点については、私も激しく同感する次第であります。

男性のプロ野球リーグは、戦前戦後も隆盛を誇り続けており、今では年俸1億を超えるプレイヤーも珍しくなければ、メジャーリーグに移籍してイチローのようにレジェンドになったり、ダルビッシュや大谷のようにスーパースターになる選手もいたりする。一方で女子硬式野球となると経営が成り立たずプロが無くなったばかりでなく、実際には加藤選手の主張とは裏腹にリーグが消滅して以降も、いまいち盛り上がってくる気配も感じられないのが現状だ。何故ここまでの差が付いてしまうのか・・・。と言う辺りを私なりにちょっと考察してみました。かなりきつい内容もあるが、包み隠して書いてもしょうが無いので一応書いてみる。
女子プロ野球の問題点は主に以下の通りと考える。

1)迫力が無い。
2)実力が中学生レベル。
3)各チームに地域色や独自性がない。
4)存在感のあるスター選手が生まれない。

と、まだあるけど大きな所ではこんな感じだと思う。
結果的に彼女らの試合を「お金を出して何度でも見に行きたい」と、一般人に思わせる所にまで行き着けないので、経営的に苦しくなり、年俸もサラリーマン並みで夢が無く、プロを目指す必要が無いので有望な選手も集まらない・・・という負の連鎖に陥ってしまうわけですね。
野球ファンがお金を出してでも見に行きたいと思うのは、やはりプロならではの職人技のような華麗なプレーや迫力のあるピッチング、バッティングを見たいからだ。女子プロ野球ではまず1)2)が大きな問題となる。特に2)はコアなファンからしたら激怒されるかも知れないが、ここでは言えないんだけど、これには実は裏付けがあったりします。ちなみに数年前の女子プロ野球チームが、大阪桐蔭の野球部と試合をして勝てると思えますかね?100%近い確率で勝てると思えるならば、女子プロ野球リーグはもっと迫力があって今も残っていると想像できるくらい活況に満ちていたと思いますよ。私は当時の総力戦でもってしても10戦中1回勝てれば幸運かなと思える実力だったと思います。つまりプロ野球と言うには力による迫力が無いんですね。
3)4)も連動するかも知れません。チームの地域色と独自性が重要なファクターです。プロ野球のセ・リーグに横浜ベイスターズという球団がありますが、前回優勝したのは佐々木主浩投手の時代の1998年です。この時に日本シリーズも制覇していますが、これ以降リーグ優勝はしていません。にも拘わらず今もホームの横浜球場で試合をすると、それなりに観客が入るのは根強い地元のファンがいるからです。リーグ一少ない予算、リーグ一少ない年俸、リーグ一スター選手不在などと色々と言われる球団ですが、横浜の人達はベイスターズを愛し続けており、プロ野球を楽しみに足を運んでいます。スター選手は確かにいませんが、これもその根強い地元のファンがスターを作り出す事も多々あります。それがかつての高木・加藤・屋敷の「スーパーカートリオ」であったり、ハマの大魔神と呼ばれた「佐々木主浩(98年優勝投手)」であったり、「ハマの番長」こと「三浦大輔」だったりします。つまりチームの地域性、独自性はそのチームのスター選手の排出と微妙にリンクするんですね。この点も女子プロ野球リーグには無かった点で、地元チーム、地元排出の選手と言った熱烈なファンを造り出し盛り上げに一役買う素地がなかったのではないかと思います。

では、もし今後女子プロ野球リーグを再興または新興するとして、実際にはどうしたらよいのかを、私なりに考えてみましたので、記しておきたいと思います。

男性のプロ野球選手並みの実力を女子選手も付ける事を目指すことは選手としては、叶う叶わないは別として良いことだと思います。選手というのは愚直なまでに身体を鍛え、技を磨き、日々の研鑽を怠らない者だと思うからです。しかし、男子プロ野球の中に交じってプレーをしても違和感の無い程の実力を付けるとなると、これは方向性が間違えていると思います。プロ野球界では、一人一人が選手であると同時に、エンターティナーでもあるのです。強いて言えば監督やコーチ、スタッフ、審判員も含めてそれらが一丸となってプロ野球という一つの「興業」を成立させています。この中に鍛え上げた身体を持った女子をねじ込んで行く事は並大抵の事では無いと思います。女子がどれほど鍛え上げても、やはり究極では男子の体力や筋力には敵わないからです。現実はそんな水島新司の漫画のようには行きません。なので、やはり女子は女子だけで女子プロ野球リーグという興行を新興するのが正解だと思うのです。しかし、「男性と同じ程度の迫力・技量を持った野球を見せる」というのも私は微妙に方向性が違うと思います。少し横道にそれますが、「興業」という観点から見ると、男子、女子それぞれで新興して成功を収めていた物として私が真っ先に思いつくのは「プロレス」です。最近ではお笑いや男女混成等、色んな団体が出来ていますが、私が言っているのはかつて隆盛を誇った頃のアントニオ猪木が興した新日本プロレス、ジャイアント馬場の全日本プロレス、女子の全日本女子プロレスの時代です。プロレスが一番盛り上がっていた頃の時代ですね。
この頃は男女混成での試合というのはほぼ無く、私の記憶では神取忍が天龍源一郎に挑戦してボロクソにやられた試合しか知りません。つまり男子は男子、女子は女子でそれぞれがそれぞれのファンを掴んで盛り上がっていたわけです。注目すべきはこの男子と女子の盛り上がり、つまりは興行内容の方向性ですね。
男子は、筋骨隆々の選手、必殺技を持った選手、華麗な技を見せる選手、凶器を使うヒール選手など多種多様で、個々の選手の魅力でファンの心を掴み取っていたように思います。
一方で、女子プロレスは確かにスター選手はいましたが、男子とは違った方向性がありました。一貫していたのはベビーフェイス(ヒーロー選手)とヒール(悪役選手)が明確に分かれていたことです。これはマッハ文朱から始まって、ビューティペア、クラッシュギャルズと受け継がれていますし、その他、小柄な選手が大柄な選手にボロクソにやられても最後は彼に勝ったり、やっぱり負けたりでファン心を揺さぶったりしていますね。そしてヒールとしては代表格はやはりダンプ松本でしょうか。彼女は最終的に極悪同盟という物を結成して、なんとレフェリーまで悪役にするという事までやってのけましたね。これによって正義VS悪者という構図を作り続け、男子とは違った雰囲気で盛り上げて行きます。しかし、ある意味ショー的であり、悪い言い方をすると茶番的な一面もある一方で、正統派のプロレスも忘れてはおらず、特に神取忍と北斗晶の血みどろの試合は、今もファンの間では語り草になっているのではないでしょうか。男子プロレスと女子プロレスの違いは興行的にはそれぞれ独自のスタンスを持っていた事も確かですが、特に見るべきは圧倒的に違う体力と迫力の差を女子プロレスがどうやって埋めていたのかです。それは、女性ならではの柔軟な身体を生かした男子では滅多と見られない技がいとも簡単に出てくる事、登場する凶器がスタンガンだったり一斗缶や竹刀、針金バットだったりと、洒落にならない物だったり、本当に血みどろで手抜かりを感じさせない「死闘」を繰り広げる事もあったりと、男子プロレスだと本当に殺し合いになるような事でも、女子特有の身体性能を生かした試合をプロレスとして見せていたのが、当時の女子プロレスの隆盛の大きな要因では無かったかと思います。
ここに、女子プロ野球リーグの再興のヒントがあるように私は思います。
今、男子がやっている事を後追いし、食い込んでいく事では無く、また女子だけで同じ船を出して男子と同じ漁をするのでも無く、女子だけで船を出し、女子ならではの要素をふんだんに盛り込んだ野球を見せる事こそが女子野球再興の道になるのではないでしょうか。そういう意味では「美しすぎる・・・」という選手の表現は女子ならではです。それだけでエンターティナーとしてファンを呼べるならそれもありだと思うのです。ソフトボール選手のような多少露出の多いお洒落なユニフォームも女子特有でしょう。審判員も女子が混じっていると雰囲気が変わりますし、ラッキーセブンの攻守交代時には五輪選手のショータイムを挟んでみたり、運動音痴なお笑い芸人に野球をやらせるようなサプライズを挟むのもよいでしょう。今、男子のプロ野球界がやっていない事をどんどんやればよいのです。できればそれだけで華々しくなります。
プロ野球は一見一丸となっていますが、実は個々のエンターティナーの集団なのです。選手一人一人が、色々な技術、手法でファンを楽しませなければいけません。それにいち早く気付いて今、監督となって実践しているのがビッグボス・新庄剛志監督ではないかと思います。今は彼を見て参考にするしかありませんが、彼が監督業を引退したら、女子プロ野球リーグ再興を目指す人たちは、いち早くプロデューサーとして取り込んだ方が良いと思いますが、いかがでしょうか。