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Z6とZ7をまとめて触ってきたが・・・。

梅田にある某Y店に行く用事があったので、早々に所用を済ませて、ついでにカメラ売り場に立ち寄ってみた。さすがに名の通ったお店だけあってニコンのZ6もZ7もレンズを付けた状態で展示されていたので、遅蒔きながら私も初めてそのフルサイズミラーレスとやらを手に取ってみました次第です。
最初に驚いたのはシャッターを押すとカシャって音がするんですね~(笑)。当たり前と言えば当たり前なんだろうけど、よく考えてみると、どこで何が動いてこの音が鳴っとるんでしょうね・・・?
違和感の無いようにレフ機のシャッター音に似せた音を作り出して、電子音を鳴らしているのだとしたら余計なお世話だと思うのは私だけですかね?電子音でこの音を作っているのかと思ったら、なかなか凝った音なので私には少々笑えた。そんなにレフ機ライクにしなくても、独自の世界を作っていけば良い物を・・・。まぁどうせ無音とかも出来るんでしょうけど。
などと、チクチクと言ってもしょうが無いので最初に結論を言いますと、私には高すぎる玩具だと感じました。また、こういうのが今後の主流になるのだと思ったら、何だか悲しくもなってきました。ニコンのフルサイズミラーレスに限らずキヤノンもソニーも含めて、なんでこんなカメラが手放しに喜ばれているのか私には理解出来なかった。

でも、カメラという機械に於ける進歩も感じた。
フィルム一眼レフは、撮影して現像、焼付けしてみなければどう撮れているのかが分からなかった。
デジタル一眼レフになって、撮影して、すぐに画像として確認出来るようになった。
ミラーレス一眼になって、撮影する前に、どう写るのかが分かるようになった。
という進歩。つまり、カメラがミラーレスになるメリットは「撮影前にどう写るかが分かる」という、ここにしかないと私は思う。
電子ファインダーをのぞいて、リアルタイムに明るさやボケを確認しながらダイヤルを動かし、見ている撮像が気に入った物になったらシャッターを切る。これが出来るのはミラーレス機しかないからだ。つまり、操作法さえマスターしておけば、ド素人でも失敗はしないのである。それは画期的な事なのかと言われれば、実はそう言うわけでもありません。なぜならこれと同じ事は既にスマホが、もっと言うとガラケーが実現していたからだ。スマホでは紛れもなく撮れる画像をリアルタイムで見て撮影しているわけで、ミラーレス機のようなややこしい操作すらない。最近のスマホではその気になれば絞りや露出だと凝った事も出来るようになっている。シャッター音だって消す事もできるし変える事もできる。
要するに、フルサイズミラーレスという名の有難い名前のついたカメラは、単純に「スマホに一歩近付いたややこしいカメラ」という訳だ。もう少し穿った言い方をすると、「撮る前に結果を見る事が出来るややこしいカメラ」と言う事になろうか。申し訳ないがそれ以上でもそれ以下でもないと言うのが正直な意見だし、ここに異論を挟む余地もないだろう。レンズが交換出来るので、スマホよりも表現の範囲は格段に広がります。それはスマホよりも優れてはいるが一眼レフとは同じ。
何が言いたいのかというと、要するに、何を有り難がって「フルサイズミラーレスだ!」と買い急ぐのかが私には分からないと言う事です。ましてやレンズも変換器を使って昔の物を使っているともなると、いよいよ分からないです。そのまま一眼レフ使ってりゃいいんじゃないのかって思う。一眼レフで腕を磨いてきた人が、そんなに「撮る前に結果が分かる撮影」に拘りたいですか?って話。

一番印象付いたのはZ6の電子ファインダーを覗いたときでした。今から30年程昔に、ソニーがパスポートサイズと銘打って発売したハンディカムのファインダーを初めて覗いたときのノスタルジックな気持ちが蘇ってきたからです。若干のジャギを感じさせるファインダー像のデジタライズな動きもそっくり。違和感なんて感じませんよ。だってこの動きは今もスマホの動画モードで見ていますから・・・。けど、この先どんなにがんばっても光学ファインダーとイコールにはならないと思います。なるなら数十年も前からリーディングメーカーとしてカムコーダーを製作販売しているソニーが実現しているはずです。有機ELだ原子力だとやっても絶対に光学ファインダーとはイコールにはなりません。なるとしたらミラーレス機に光学ファインダーが搭載された時でしょう。しかしそれをやると「撮る前に結果が分かる撮影」はファインダー内では出来なくなってしまいますから、ミラーレス信者の人からすればあり得ませんね。つまり、イコールとはならない以上、光学ファインダーの存在理由は残る訳で、結果レフ機もそれなりにしぶとく生き抜いてゆく事になります。って言うか、私はもうずーっと前に、カメラとビデオは融合するって言ってますけどね。例えば、フルサイズセンサーを搭載したレンズ交換式の8Kビデオが出てきたら、フルサイズミラーレス機なんていらなくなるんじゃないの?パナソニックは密かにそこを狙っているように見えるんだけどねー。
 
そんな(私的には)撮っていて楽しいとは思えなかった完全電気仕掛けのフルサイズミラーレス機ですが、こんな事が出来たら面白いのになぁ・・・という機能を少しご提案しましょう。

<ネットワーク機能>
複数のカメラをWi-Fiでアドホックにつなぎ、撮像をリアルタイムに共有する機能だ。A、B、C、Dの4人で撮影に臨場しているとしよう。その4台がWi-Fiでつながっており、例えばAの見ているファインダー像がB、C、Dにも配信される。で、それぞれがAの撮影を高みの見物をする事も出来るし、個別のタイミングでシャッターを押して自身の写真にする事も可能という訳だ。主に教育用に使える機能かもしれないが、大人数で行くと逃げてしまう野鳥や動物撮影でも使えるかも知れない。電子ファインダーならではの機能だろう。

<VPN機能>
ルーターを介してVPNでスマホや離れた所にあるカメラと情報を共有する機能だ。上記のネットワーク機能の拡張機能と言っても良い。アドホックと違いインターネットを使うインフラストラクチャー形式なので、北海道にいる友人が今見ているファインダー像を、大阪にいる自分のカメラやスマホ、パソコンでも確認、撮影ができるという物だ。ファインダー像をコントロールする事は出来ないが、シャッターを切る事は出来るので、報道ステージでも役に立つ機能かも知れない。また、自宅のパソコンに撮影データを転送する事も可能にすると、メモリの残量を気にする事も少なくなるだろう。これらも電子ファインダーだからできる事だろう。

他にも色々と思いつけば有るがキリが無いのでとりあえずこの2つだ。今までのカメラに出来なかったのが、ネットワークによるカメラ同士の連携だ。ファインダー像から記録画像までが全てデジタルと言う事になると、それが可能になる。自衛隊の10式戦車ではないが、複数のカメラ同士が情報を共有出来るようにする事で、教育、趣味、仕事と色んな分野で実用的に使える幅が広がるのではないかと思われるがいかがだろうか。たまたまここを見たカメラ開発者がいたら私は何も言わないので「私が思いつきました」みたいにして是非企画書をぶち上げてみてくれ。すぐに他のメーカーも追随してくると思うぞ。笑

さいごに、
閉塞気味だった一眼レフ市場ではあったが、柳の下にたくさんのドジョウがいるのが見えたかの如く、一斉にミラーレス機へのシフトをした訳ですが、私ははっきり言ってこれはカメラメーカーとしての大きな賭けだと思います。なぜなら先述したように、ミラーレス機の最大のメリットは「撮る前に結果が見える撮影ができる」事に尽きるからです。少なくともブライダル関連などの一発勝負のプロカメラマンはそこに優位性を感じて乗り換えるのは間違いないでしょう。しかしそれは、スマホに一歩近付いたと言う事です。まだ分からない人に更に言いますと、スマホがRAW撮影出来るようになり、Lightroomなどでスマホ内RAW現像ができるようになると、この2つは殆ど同じ物になると言う事です。違うと言えばレンズ交換ができると言う事だけでしょうか。しかし、通常の撮影できる焦点距離の範囲をカバーしていれば普通の人は文句はないはずです。となると、最終的にはスマホが有るのになんでわざわざ数十万円もするようなミラーレス機を買って、仰々しい撮影なんかせなあかんねん・・・と、なる訳です。一眼レフ機にはプロ志向な部分が多くあり、そこにこそ所有欲を満たす物がありましたが、スマホに近いミラーレス機に、それらは私は殆ど感じなかったのです。だから20万円でも「高い」と感じたのです。正直Z6やEOS-Rを買うぐらいなら、スマホで充分と思いました。私が思うくらいですから、カメラに興味のない人はもっと思うでしょう。だから賭けなのです。私にはNikon1がダメでZ6やZ7ならOKという意味が分かりません。メリットに軽さを挙げたらα6000やEOS-MやNikon1の方が遙かに上でしょう。インスタの画像を見てZ7で撮った写真とNikon1のそれとの区別が一目で分かるとでも言うのでしょうか。ホント、ちょっと何言ってるか分かりません状態です。

結局カメラはどこに行き着くのでしょうか。
これを考えると、私は「全て後から何とか出来るカメラ」に行き着くと思っています。
例えば、絶望的にピンボケになった写真も、後からピシッとした写真に修正出来るとしたらどうでしょうか。
例えば、目の前の広大な風景全てを高解像度の画像としてお持ち帰りし、家に帰ってゆっくりお気に入りの箇所をトリミングして数枚の写真にできたらどうでしょうか。
例えば、一見黒一色の真っ暗な写真でも、明るさを持ち上げて違和感なく雰囲気のある写真に補正出来たらどうでしょうか。

これらの幾つかは、すでにやろうと思えばできますが、それなりに一工夫必要だったり、専用の機材が必要だったりします。が「全て後から何とか出来るカメラ」となるには、手軽にできなければなりません。それを可能にするのが8K以上のビデオカメラだと私は考えています。8K=3300万画素。現在の一眼レフ機の高画素機に匹敵する高密度な画素数です。このビデオは録画ボタンを押すと秒間30~60コマの連写を行います。当然全てを自動で撮影しますので、「全て後から何とか出来るカメラ」になり得る可能性を秘めています。ここまで来るとカメラで写真を撮るという概念その物が変ってしまうでしょう。そう、タイミング良くシャッターを切るのではなく、予め録画ボタンを押しておく・・・という撮影に変るからです。
それってスチル写真を趣味にしている人にとってはどうでしょうか?
撮影が面白いと感じる事は出来ますでしょうか?
電子音でそれっぽいシャッター音を鳴らせば楽しいのでしょうか?
それではまるでおもちゃのカメラで遊ぶ子供のようですね。
私には撮影という事に於いては可能性は感じる事は出来ますが、面白いと感じる事は出来ないと断言できます。そう、撮影がリアルタイムに分かり、更に後から何とでもなるようになってくると撮影その物のスタイルも変り、面白くなくなるのです。今回一眼レフ機を触ってきた人向けに開発され、今後本流にしてゆくというメーカーの決意も籠もっているのであろうフルサイズミラーレス機を触り、本来鳴るはずのないシャッター音が聞こえ、ジャギっぽいファインダー像を見た時に、私は撮影の新しい可能性を感じると共に、カメラがまた一つ面白くなくなったと感じました。面白いと感じられる撮影をする機械という点においては、デジタル一眼レフというカメラはギリギリのラインではないのかと私には思えたのです。これ以上はスマホの領域、その更に先はムービーの領域です。スマホもムービーも一眼スチルカメラには近付いてはいません。一眼スチルカメラが近付いていっているのです。私にはそんなカメラのファインダーの向こうに見える未来の景色は、あまり良い物は見えてきませんでした。